選手たちのそんな思いがいい方向に働いて、日本ハムが快進撃を続けると、ついに9月27日の福岡ソフトバンクホークス戦で、レギュラーシーズン1位が確定します。しかしこれで優勝ではありません。2004年から3年間導入されたプレーオフ制度によって、1位から3位のチームで行われるトーナメントを勝たなければ、リーグ優勝にはならなかったのです。

「1位になったのに、なんで優勝じゃないんだよ」

 それが当時の僕たちの偽らざる気持ちでした。でも、ルールですから仕方ありません。

 優勝を決めるプレーオフに、レギュラーシーズン1位の日本ハムは、第2ステージから出場します。対戦相手は、第1ステージを勝ち抜いてきたソフトバンクです。3勝先取という優勝条件に対し、レギュラーシーズン1位の日本ハムは、1勝のアドバンテージをもって臨めました。

 10月11日、札幌ドームで行われた1試合目を3対1で制し、日本ハムは優勝に王手をかけます。そして迎えた翌日の2戦目、試合は投手戦となり、9回表のソフトバンクの攻撃が終わった時点で、スコアは0対0でした。9回裏、日本ハムの攻撃は1番バッターの僕からスタートします。

 ソフトバンクのピッチャーは、この年、勝利数、防御率、奪三振数、勝率でリーグトップだった、エースの斉藤和巳さんです。

 フォアボールで出塁した僕は、2番バッター田中賢介の送りバントで2塁へ進みます。その後、3番バッター小笠原道大さんが敬遠によって出塁、4番バッターのフェルナンド・セギノールが空振り三振で凡退したため、ツーアウト、ランナー1塁、2塁の状況で、5番バッター稲葉篤紀さんの打順となりました。ネクストバッターズサークルには、6番バッターの新庄さんが入っています。

「外野は前進守備してるな。内野安打だったらホームには帰れないだろうな」

 2塁ベース上の僕は、いろいろな展開を頭の中でシミュレーションしていました。

 緊張が高まるなか、斉藤さんが投げたフォークボールに、稲葉さんがバットを当てました。打球はセカンドへ。普通なら、セカンドがキャッチしたボールを、2塁に入ったショートにトスして、ランナーアウトとなる場面です。ソフトバンクの守備陣の連携は完璧でしたから、誰もが小笠原さんはアウトになると思ったでしょう。

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