相浦駐屯地の中でも、最も忙しいのが水陸機動団準備室。人材のリクルーティング、武器や資材の調達、作戦・運用のマニュアル作成などが仕事で、装備品の調達一つとっても、何もかもが足りない状況なのだという。寝る間も惜しんで“24時間勤務”で働いている隊員もいるのだとか。

 島しょ防衛は、数ある自衛官の仕事の中でも、最も過酷で、強靱な精神力なくしてできない任務だ。現場の隊員たちは、身命を賭す覚悟で任務を全うしているのだ。

●防衛七族で繰り返される 終わりなき権力闘争

 それに比べて、東京・市谷の防衛省・自衛隊で繰り広げられた権力闘争とは何だったのか。

 今夏、南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報問題をめぐり、稲田朋美・前防衛相、黒江哲郎・前事務次官、岡部俊哉・前陸上幕僚長の3トップが辞任することで幕引きとなった。

 一連の問題を通じて、日本の防衛政策を預かる防衛省・自衛隊の構造的欠陥が次々と明るみになっていった。文民統制(シビリアンコントロール)の機能不全、陸上自衛隊の隠蔽体質、背広組と制服組との確執、陸・海・空の縄張り意識──。

 なぜ防衛省・自衛隊でスキャンダルが繰り返されるのか。その背景には、根深い権力闘争がある。

 防衛七族──。防衛省・自衛隊には、7種類の人間がいる。

 すなわち、(1)政治家ポスト(大臣や政務官など)、「背広組」の(2)事務官、(3)技官、(4)教官、そして、「制服組」の(5)陸上自衛官、(6)海上自衛官、(7)航空自衛官の7族である。

 これだけ異なる背景を持った者同士が同じ組織にいればもめ事が起こらないわけがない。

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