椅子をなくしたのは「営業マンが社内にいる時間を少なくするため」で、石田和彦取締役は「椅子なしは健康にも寄与する」と感じています。


「私は猫背ぎみなので、座りながら仕事をすると、腰に負担がかかる。でも、立って仕事をすると背筋も伸びるので、腰がラクになりました」(石田取締役)

●変化に対応しやすくなる

 立っているより座っているほうがラクなのは、体が安定するからです。

 でも私は、「立つ」という不安定な状態に慣れることで、社員の対応力が養われると思っています。

 安定感を好む人は、変化を嫌います。安定しすぎると、動作が遅くなりやすい。

 わが社に安定はありません。頻繁に人事異動をし、朝令暮改は当たり前です。会社のルールや方針もしょっちゅう変わります。

●なぜ、ただのパイプ椅子が1脚8000万円もするのか?

 社長室に私の椅子はありません。

 でも、「この椅子は1脚8000万円也」という札がかけられた椅子が4脚あります。

 実際には、買った値段は1脚1万円もしません。

 では、なんの変哲もないパイプ椅子が、どうして8000万円になったのでしょうか。

 それは、「過去に犯した大失敗が、形骸化しないようにするため」です。

 私は新規事業に失敗し、総額3億2000万円の損失を被りました。

 事業を撤退した後に残ったのは4脚の椅子だけでした。

 そこで、この失敗を糧かてにするために、「1脚8000万円」の札をかけた。

 この椅子は自らを戒めるために常に社長室に置いており、武蔵野の現地見学会に参加した方にも公開しています。

 ここまで「椅子なし」の取り組みを紹介してきましたが、武蔵野ではすべての従業員に椅子がないわけではありません。

 社長、営業関係の管理職以上の椅子はありませんが、総務や経理関係部署には椅子があります。

 いつもいろいろな企業の社長にも言っていますが、要は椅子が必要な部署と取っ払うべき部署を社長自身が自分の頭で考え見極め、ケース・バイ・ケースで判断する。

 これが大事です。