それに日本は2100年には人口が約4000万人になるという試算が出ていて、そうなると今のままでは地方は完全に潰れる。自分が育った町が消滅するのって嫌じゃないですか。それもありましたね。

 でも明治維新の頃は3500万人しかいなかった。そう考えると、そこに戻るだけなんです。明治維新の頃も、ちゃんと日本はやれていたわけです。そこから異常に東京だけ人口が膨らんじゃったわけで、地方に戻っていけばフラットになる。元に戻るだけです。東京もミラノくらいでいいんですよね。一極集中は貧しい国のパターンで、日本はもうずっと豊かなんですから、ヨーロッパ的になっていくということなんでしょうね。

――倉吉から日本の大都市に発信していくということでしょうか。

 僕は日本も世界の市場のひとつとして捉えているので、日本で売れるようになりたいというのが目的ではありません。フィレンツェではイタリア人の好み、上海では中国人の好み、NYではアメリカ人の好みを考えて、戦略を練ります。東京でも日本人の好みを考える。それだけです。

 ただ、いいものを作っていても、価格では中国に負ける。商売だから、そこが難しい。だからといって、価格を下げると品質が保てない。コストを削減すれば生産者が疲弊する。特にバッグは安いからいいというものではないし、高いから愛されるというものでもない。本当にいいものを作って製品に納得してもらい、高付加価値で金額に納得してもらう、これがベストです。

 バルコスは、いかに海外の女性に日本のブランドのバッグを持ちたい、バルコスが欲しいと思ってもらうかを考えています。『Hanaa-fu(ハナアフ)』は折りたためるバッグでありながら、どのたたみ方でも美しい形と機能性を備えてます。この技術と発想が海外でウケて「折り紙のようだ」「高品質と高機能が日本らしい」と高い評価をいただきました。世界では『Hanaa-fu』がバルコスのイメージになっています。

 これは、日本人ならではのコンセプトを前面に出して勝負したラインです。これが世界で爆発的にヒットしました。「フューチャリスティック」というのが外国人には日本らしかったようです。「ハンドバッグを科学する」という感じと、折り紙の不思議さに似ていて日本的に見えた。バルコスが作るとバッグも楽しくなると印象づけることができました。日本の商品で初めて、見た目だけで勝負できたバッグなんです。これからもいろいろなコラボなど、様々なパターンを考えていこうと思っています。

●バルコスがサンプル作りに情熱を持っている理由

 国内向けには、世界基準のラグジュアリーブランド『バルコスJライン』を用意しています。Jラインは革なめしから、裁断、縫製、彫金にいたるまで、すべて日本製。日本最高峰の職人たちが、日本のもの作りに徹底的にこだわりました。この伝統の技に日本が世界に誇るクリエーターの感性を掛け合わせることで、これまでにない、世界に通用する高感度なラグジュアリーレザーブランドを作り上げました。

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