──それで、介護事業で稼いでいた50億円の利益を得られますか。

 介護食のマーケットは7000億~8000億円あり、将来は1兆円になります。5~10%のシェアを取るだけでも相当な規模になります。ただ、私にとって介護は単なる事業ではなく、ライフワークだったので非常に残念です。

──業績悪化の要因の一つに、ワタミのイメージ悪化があります。ブラック企業と言われ、世間の風当たりが強くなりました。

(2008年に過労自殺した)森さんが亡くなられたことについては100%私の責任です。ワタミが介護を売却したこと以上に、社員も忘れてはいけない事実です。

──現在の居酒屋マーケットをどう見ていますか。

 僕が創業した30年前とは時代が変わりました。われわれは、チェーンストア理論で会社を伸ばしてきた。生産性を高め、仕入れ力を強化し、一つの商品をいかに安く出すかに全力を注いできました。

 しかし、今のお客さまは、チェーンストア理論を好きではないと言っている。均一化された280円の物より、380円でいいから、そこにしかない物が食べたい。お金の使い方や価値観が変わった。

 同じ業態で1000店舗造るのがチェーンストア理論。もうそこから離れて、限りなく個人店に近づいた方がいい。

──もう一度、ワタミの経営に戻るつもりはありませんか。

 まったくありません。ワタミは僕の子供そのもの。命を懸けてつくってきた会社だからかわいいですよ。でも、子供は自分の所有物ではないですよね。現経営陣が困ったり、迷えば相談に来ます。親として相談に乗り、見守る。ただ万が一、どうしようもない状況になったら、全てを捨てて戻ります。

 確かに、僕が経営していたら、こんなことにならなかったとは思います。だけど、ワタミが100年続くなら、通らなければならない道だった。もし僕が経営者だったとして、急死したらワタミはつぶれてしまう。今はまだワタミの再生を見守ることができるのです。