第28回 日本のエネルギー政策 ――時期と人で変わる発想と仕組み 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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第28回 日本のエネルギー政策 ――時期と人で変わる発想と仕組み

文・堺屋太一

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1.日本のエネルギー政策の迷走

 私は1969年に通産(現経済産業)省の鉱山石炭局(現資源エネルギー庁)に配置換えになって以来、常にエネルギー問題を考えて来た。そして今(2015年) も、日本のエネルギー政策が長期展望を欠く点を嘆いている。
 戦後のエネルギー政策は、その時の時流で大変化する。エネルギー供給のように長期間を要する事業には真に困ったことだ。

2.戦後のエネルギー政策を時期別に区別すると次のようになるだろう。

第1期 敗戦直後 石炭増産政策(1960年迄)
第2期 安価石油時代(1960―72年)
第3期 石油危機時代(1973―84年)
第4期 高値変動時代(1985―2013年)
第5期 供給過剰時代(2014―)

3.以上の時代変化の度に日本のエネルギー政策は変化、経済と社会に無駄と怨念を残した。

 第1期の石炭増産時代には多くの石炭業者が成金となり、九州や北海道に石炭労働者の町「炭住」ができた。60年代に入ると、安価な石油が溢れ、石炭産業と炭鉱町の縮小に何兆円もの国費を費やした。

 第2期の安価石油時代は高度成長の前半、日本の青春に当たる。エネルギー政策らしいものはなく、国際石油資本(メジャー)からの安値輸入に頼った。

 第3期の石油危機時代、日本は大変化に慌てふためき、内に混迷を、外に国家の品格を疑われるほどの迷走をした。この時に慌てて造った原子力発電所が、今廃炉問題に直面している。

 また、当時巨額の費用を投じた「核融合発電」の研究は「30年以内には確実に実用化する」という研究者の断言にもかかわらず、未だ実現の目途もたっていない。こんなことなら「太陽光や風力、水素利用研究に全力を挙げていれば」と思う。

 第4期の乱高下時代、バーベル40ドルから 160ドルまでを激しく上下した。イラン・イラクの政情からリーマン・ショックまでは石油価格に反映し、世界経済を揺れ動かした。世界の石油開発がその都度揺れ動いた。

第5期は、シェールガスの登場で石油供給過剰時代、この低価格時代が長く続くかが問題である。

 シェールガス開発の主要プロジェクトは原油換算でバーベル60ドルという。原油価格がそれ以下に定着すればシェールガスの生産は大幅に減るだろう。

4.今や、石炭石油天然ガスの化石燃料の75%は中国やインドなどの発展途上国(新興国)で使われている。石油価格の下落は新興国の経済には援けになるだろうが、資源輸出国の経済には打撃になる恐れもある。

5.最近、日本政府は太陽光発電電力の買取価格を1kwh当り27円に引き下げると決定した。一昨年(2013年) 以来、私は「太陽光発電電力の買取価格は25円程度とするが、その施設投資者には特別償却制度を適用、これを相続税評価にも反映する」という政策を提言して来た。ところが、時の担当課長は「1kwh42円」の高値買取にこだわった。
結果は御存知の通り、電力会社によるメガソーラー発電電力買取拒否となった。
エネルギー政策は、価格と環境と長期見通しの交点、短期で配置転換する日本の官僚制度には不得手な分野かも知れない。

(週刊朝日2015年4月3日号「堺屋太一が見た戦後ニッポン70年」連載35に連動)


(更新 2015/11/ 4 )


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プロフィール

堺屋太一(さかいや・たいち)

 1935年生まれ。本名は池口小太郎。60年に通商産業省に入省し、大阪万博をプロデュース。退官後は作家・経済評論家として活躍。経済企画庁長官を務め、現在は内閣官房参与。主な著書に『団塊の世代』(文春文庫)、『平成三十年』(朝日文庫)など

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