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30歳年上、2000円。

文・内藤みか

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 先日、20歳の男友達とランチをしてお互いの近況報告をした。
 彼は年上女性が好きで、このたび30歳年上、つまり50歳の恋人ができた。その話を聞いたのは3ヶ月ほど前で、年齢差に驚く私に、彼はすごいでしょ、と得意げに微笑んだ。メール交換で親しくなった女性で、とても尊敬できる人なんだ、とその時は随分幸せそうだった。

「彼女は僕にだけ本音を見せてくれるんです。そのギャップがたまらないんです」
 などとさんざんノロけられ、うらやましく思っていたのだけれど……。
 3ヶ月後の彼は、ややテンションが下がっていた。どうしたのと聞くと、彼女が変わった、とこぼすのだ。

「最近はケンカをしたら泣きじゃくっちゃうし、ちょっとしたことでスネるし、なだめるのが大変で……」
 と、表情が冴えない。それはきっと彼女が心を開いてきてくれた証拠だと思うよ、というと頷き、こんな可愛い彼女を知っているのは僕だけですよね、と苦笑した。

「でも、これじゃあ僕が年上で彼女が年下みたいで……最近はテーマパークに行きたいとか言い出すし……」
 とぽつんと彼は呟いた。大人のお姉様とのハイセンスな恋愛を恐らく彼は望んでいたのだろう。でも、私は彼女の気持ちが痛いほどわかった。

 私だって同じようなことをしている。若い男性と親しくなったら、今どきの若いカップルが出かける場所に行きたがる。今だったらダーツバーやクラブを見てみたい。気になっていたけれどなかなか行く機会もなかったから若い男性と楽しみたいのだ。

 でも若い彼は違う。むしろ大人の女性とでないと行けない場所に行きたがるのだ。シティホテルのラウンジのような静かで落ち着ける場所に一緒に出かけて、背伸びした時間を過ごすことを喜ぶのである。

 熟女ともなると、普段なかなか人に甘えられないから、恋人に深く寄りかかりたがる。でもさすがにグチや涙まで共に背負えるほど若い男は人生経験が達者ではない。なんとかお互い、バランスを取れるといいのだけれど。

 がんばってね、という意味も込めて、ランチ代の2人分2000円は私が支払った。次にランチする時には、彼はどんな顔をしていることだろう。


(更新 2013/3/18 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh