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新型インフル、1070円

文・内藤みか

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 ついに我が家にも新型インフルがやって来てしまった。中学2年の息子が持ち帰ってきたのだ。

 症状は噂以上に猛烈で、深夜の発熱は38.8度で落ち着き、やれ一安心と思っていたら、その2時間後にいきなり40.8度へと跳ね上がった。息子は喉の腫れで息ができなくなりそうだと訴え、脈がひどく速くなった。

 泡を食った私は119番した。
「救急車を呼ぶほどじゃないかもしれないんですが、どうしましょう」
 と相談すると「自力で行く手段がないのなら、呼んでくれていいんですよ」と心強い一言が返ってきて、救急車は7分で飛んで来てくれた。息子を乗せてサイレンを鳴らして走り出すとモーセの杖のように車やバスが左右に分かれてくれて、まるで奇跡を見るかのようだったが、なんだか申し訳なくて身を縮めるようにして乗っていた。

 息子は小学2年生の頃も、頭から転び救急車にお世話になったが、その時と大きく違うのは、彼が大きくなり、私の力では抱き上げることができなくなったことだった。脱力した中学生の男の子の体は重く、待合室のソファに横にさせるのも一苦労だった。

 こういう時、父親がいて車があれば、さっと息子を抱え、救急病院に連れて行ってくれるのだろう、という心細い気持ちは、
「さあ、お薬を病院前の薬局で受け取り、お帰りください」
 と窓口で言われた時にマックスになった。ここに連れて来てくれた救急車はもういない。私はどうやって帰ればいいのだろう? それに息子は薬局に寄る体力もない......。

 でも、なんとかなるものだ。病院の玄関にはこうした患者のためなのかタクシーが常駐していたのでとりあえずそれで家に帰ることができた。そして息子を部屋に寝かせて私だけ自転車で薬を受け取りに戻った。タクシー代は1070円だった。

 車さえあれば、車内に息子を寝かせて運ぶことができたのに......。車なし家庭の弱さを思い知らされたできごとだった。でもこれからも車を持つ予定は全くない。こうやって人さまの運転にすがりながら、なんとか子育てしていくしかないのだろう。

 ちなみに息子は翌朝にはすっかり平熱に戻り「おいしいもの持ってこい」と騒いでいる。うるさくてかなわないが、でもやっぱり毎日はこうでなくっちゃ☆ みなさまも新型インフルにはどうかお気をつけくださいね。


(更新 2009/10/22 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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