撮影、1050円。 |AERA dot. (アエラドット)

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撮影、1050円。

文・内藤みか

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小学2年生の娘が、このたび8歳のバースデーを迎え、記念にお姫様になりたいというので、近所の写真撮影スタジオに連れていった。

ドレスに着替え、控え室から現れた彼女に言葉を失った。

お世辞抜きで、可愛いのだ。

くるくるの長い巻き毛に、黄色の裾広がりのドレス。ルージュを塗られた唇。色白の娘なので化粧が映え、急に何歳も大人になった気がした。店員さんに「中学生にも見えますね」とおだてられ、娘は調子に乗ってしなをつくり、小首を傾げて上手にスマイルし、フラッシュを浴びている。

ああ、この可愛らしさをちゃんと残しておかなくては。そう思ったのだけど、さすが写真館の料金は高い。最初に勧められたキャビネサイズのフレーム入りのものは、数千円もした。表情豊かな娘なので7パターンの写真が欲しかった私は、節約作戦に出た。

「フ、フレームは、家にいっぱいあるから、写真だけ購入することはできないかしら?」

「お写真だけですか? ですと3360円になりますが」

迷っていると、お店のほうから助け舟を出してくれた。

「小さなサイズもありますよ」

私たちはその日家族写真も撮った。息子と娘と私。本来いるはずの父親の姿がなかったことで、お店のほうも、母子家庭と推測したのか、1050円のサービス判の存在を教えてくれた。ごく普通のL判の写真のことである。

「あっ、じゃあそれください」

写真館で撮ったのにサービス判のみで焼いてもらうというのもどうかとは思うけれど、予算もあるので仕方がない。

その他娘がキーホルダーなどを希望し、合計で1万円ちょっととなった。

「1万円を超えた方には、プレゼントがあります」

大きく引き延ばした写真を、一枚オマケで焼いてくださると言われ、ありがたかった。

帰宅後、写真館のホームページを眺めてみると、1050円のサービス判の存在は商品一覧にも出てはいなかった。 スタジオには様々な衣装があり、ウェディングドレス風の真っ白なドレスもあった。

「来年はそれを着てみたら?」

と言うと娘は首を横に振った。

「それは、結婚式までとっておくわ」

彼女は自分がいつか必ず幸せな結婚をできると信じているのだ。娘の先には真っ白で無垢(むく)な未来がある。

私はできちゃった婚だったからウェディングドレスさえ着ていない。娘がうらやましく思えた夜だった。


(更新 2009/3/26 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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