第10回 「本当の自分」を探さない小泉今日子の強さ (1/6) |AERA dot. (アエラドット)

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第10回 「本当の自分」を探さない小泉今日子の強さ

文・助川幸逸郎

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原宿百景 (SWITCH LIBRARY)

小泉今日子著/写真:若木信吾

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NIKKATSU COLLECTION 十階のモスキート(DVD)

出演:内田裕也、アン・ルイス/監督:崔洋一

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出演:小泉今日子、浅野忠信/監督:相米慎二

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■時にはオードリー・ヘプバーン、時にはソフィー・マルソー

 ――変幻自在だった「小泉今日子のアイドル時代」

 アイドル時代の小泉今日子の演技には、目を見張らされる点があります。台詞まわしには「経験不足」を感じさせるものの、全身のたたずまいは、役によってまったく別ものに変わるのです。

 小泉今日子が初めて出演した映画は、崔洋一監督の『十階のモスキート』(1983年)です。彼女はここで、内田裕也扮する「生真面目な警察官」の一人娘・リエを演じています。リエは、東京から電車で一時間少し離れた木更津に住み、日曜日ごとに原宿の路上で踊る「不良少女」です。

当人もカミングアウトしているとおり、中学時代の小泉今日子は「不良」でした。週末はかならず原宿で過ごしていたといいます(注1)。そのころ住んでいたのも、「東京から小一時間で行かれる地方都市」厚木です。『十階のモスキート』のリエと、デビュー前の小泉今日子は、かなりの部分で境遇がかさなります。
 
そのせいか、『十階のモスキート』における小泉今日子の存在感は強烈です。思春期を迎え、体に急速な変化が起こり、周囲が自分を見る目も違ってきた。そのことにどう対処していいかわからず苛立って、反抗的になるしかなくなっている――リエのそういう状態が、台詞なしでも伝わってくるのです。

 翌年、庄司陽子の人気コミックを原作にした映画『生徒諸君!』で、小泉今日子は主役をつとめます。病弱で天使のように清らかな心を持ったマールと、溌剌として仲間たちをリードするナッキー。対照的な双子姉妹を、一人二役で演じました。マールの「儚さ」と、ナッキーの明るい笑顔の底にひそむ「マールのようには両親から愛されない寂しさ」。それぞれのキャラクターの勘どころを、小泉今日子は的確につかまえています。

 興味ぶかいのは、マールとナッキーのどちらも、「肉体など持たないかのような透明さ」を感じさせる点です。自由にならない体を持てあましていた『十階のモスキート』のリエ役と、同じ女優が演じているとは思えませんでした。

 1986年には、映画『ボクの女に手を出すな』に出演しています。小泉今日子の役まわりは、大富豪の跡とり息子を誘拐する計画に巻きこまれた「貧乏な不良娘」黒田ひとみです。おなじ「不良」といっても、ひとみは『十階のモスキート』のリエと印象が違います。ひとみの背後には、「勢いがあってハイセンス」という「アイドルとしての小泉今日子」のイメージが透けて見えます。衣裳も、一見「不良風」でありながらカラフルで魅力的です。


(更新 2015/6/ 3 )


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プロフィール

助川 幸逸郎(すけがわ・こういちろう)

 1967年生まれ。著述家・日本文学研究者。横浜市立大学・東海大学などで非常勤講師。文学、映画、ファッションといった多様なコンテンツを、斬新な切り口で相互に関わらせ、前例のないタイプの著述・講演活動を展開している。主な著書に『文学理論の冒険』(東海大学出版会)、『光源氏になってはいけない』『謎の村上春樹』(以上、プレジデント社)など

※当コラムをテーマにした、助川幸逸郎先生の講座をよみうりカルチャー自由が丘で開催
http://www.ync.ne.jp/jiyugaoka/kouza/201504-01210123.htm
問い合わせは同センター 03-3723-7100

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