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第1271回 バニラに恋していたのかも…

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 長男の家で飼っていたバーニーズマウンテンドッグ。名前はバニラ(写真)。大型犬の女の子だ。

 6年前、そのバニラがわが家にやって来た。長男の海外長期出張とその後の駐在に伴い、預かったのだ。

 最初に困ったのは、真夜中、それも2~3時の間に必ず鳴きだすことだった。

 冬の未明に起き、彼女をなだめるために犬小屋のある外に出る。防寒服を着込んでバニラの頭や首筋をなで、落ち着かせてから布団に入る。布団に入っても、またすぐ鳴きだす時もあり、私も泣きだしたくなる。

 1年余りたってようやくホームシックが治まり、夜鳴きはピタリと止まった。

 秋の気持ちのいい休日は遠くまで散歩に出た。バニラの綱を外し道端に座ってハーモニカを吹く。「故郷」を吹くと空を見上げて見事な遠吠えをする。

 散歩の時、こんなにしつけのいい犬は他にいない。綱を外しても主人の右側を見事に密着して歩く。すれ違う人から「いい犬だね」と言われると、私は「私よりずっとしつけが良いです」と言って褒めてやる。

 バニラも褒め言葉がわかるのか体をピタリと付けてくる。首筋をなでてやると私の顔を見上げ、甘えるようにくっついて来る。

 バニラが来て3回目の冬を迎えた頃から時々散歩行きたくないよと、その場に止まるようになった。この頃からバニラの病気は始まっていたのだろう。

 3年前の春、病院に連れていくと、リンパ腫で余命1年くらいかもしれないと宣告を受けた。7月には肺に転移。亡くなる2日前からは食欲も落ち、息遣いが荒かった。夕方、地面にへたりこみ、悲しそうな目で見上げていた。これが最後の姿だった。

 振り返れば私はバニラに恋をしていたのかもしれない。バニラよ、ありがとう。

(野崎敏勝さん 静岡県/69歳/無職)

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(更新 2018/4/12 )


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