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第1250回 君が好んだ栗きんとんを供えよう

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 子どものころに尻を噛まれて犬が苦手な私だったが、家族の強い要望に負けて犬を飼うことになり、パピヨンの源太(写真、雄)がわが家にやって来た。16年前の8月の暑い日だった。

 私は、生後1カ月で片手にのってしまうはかなげな彼の姿にすっかりメロメロになった。私がリビングのソファでくつろぐ時、腹の上にはいつも彼がいた。

 かくして、甘やかされた彼は立派なおバカ犬となり、畳をかじる、掘る、和室の塗り壁を舐めまくる……。ソファで眠りこけた私の眼鏡のつるを幾度となくかじってボロボロにした。あまり頻繁にかじられるので、近隣のいくつもの眼鏡店に2度、3度と通った。

 北海道土産のホワイトチョコや高級和菓子の栗きんとんを食べられたこともある。手羽先の骨を10本食べた時は、慌てて病院に直行した。その都度、私が原因だと家族から非難され、ひたすら謝るのみだった。

 もっと強烈なこともあった。寝ている私の足元にいつの間にかやって来ていて、寝返りした拍子に足の親指に噛みつかれた。爪を生成する箇所だったので、完治まで2回の手術を要して、3カ月も病院に通った。飼い犬に手ならぬ足を噛まれたと、皆に笑われたものだ。

 しかし当時、毎日帰りが遅い私を、彼だけが玄関で尻尾をはちきれんばかりに振って出迎えてくれた。

 時は流れ、彼も寝て過ごす時間が長くなった。このひと月は急に食事ができなくなり、食いしん坊だった彼が口にできるものは、水だけになった。ただ寄り添うことしかできない私たちのために、最期までよく頑張ってくれたと思う。

 その日、外出先から帰った直後、私の呼びかけにフ~と応えて息を引き取った。

 源太、長い間ありがとう。君が大好きだった栗きんとんを供えよう。

(大西登喜雄さん 千葉県/67歳/会社員)

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(更新 2017/11/ 9 )


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