わが家の白チュノ(写真、15歳)は子どものころからやんちゃな男の子。
 毎朝、外に出せとワーワー鳴いて、庭に出るとあっという間に遠くに行ってしまい、夜まで帰ってこない日もしばしばでした。
 ある寒い冬、思わぬ事件が起きました。
 その日は午前0時過ぎまで待っても、とうとう帰ってこなかったのです。あくる朝、ぽとっという足音とともに帰ってきたのですが、なんと、前足の指先からは鮮血が出ていました。
 右足には罠がついていました。罠を仕掛けた人が朝見つけてチェーンを刃物で切ったようです。
 病院で罠の本体を切ってもらいました。指先は自分で噛みちぎったのだろうとのこと。その傷よりも、最初はたいした傷に見えなかった罠がかかっていたところの化膿がひどくなり、足を失うかもしれないという宣告まで受けました。
 看護の甲斐あって危機をまぬがれ、治った後はまた相変わらずの外遊び……。
 そんな彼にも10歳ごろから強敵が現れ、痛手を負って帰るようになりました。そこで、鳴き叫んでも外に出さず、縁側の網戸もテープで固定しました。
 しかし彼は網に爪を掛けて全身を使い、渾身の力で開けて脱走する始末。戸締まりしたつもりでも、うっかり閉め残したところでもあろうものなら、いつの間にか脱走。彼は、脱走の達人ならぬ「達猫」なのです。
 近年の猛暑は老体には厳しいようで、もうだめかと思うほど衰弱し、私を心配させました。絶対に脱走させまいと家中の網戸を両面テープでしっかりと固定したところ、最近は諦(あきら)めておとなしくしています。
 午前中にリードを付けてのお散歩、午後のお昼寝。夜はお布団に入り朝まで就寝。彼は老後を穏やかに過ごしています。

(崔泰順さん 岡山県/69歳/ハングル講師)

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