わしは犬、名前はトラン。ウィペットという犬種の雄で(写真)、8月が来ると16歳になる。
 2年前までは毎朝、ご主人と3キロの散歩をしたり河原を走り回ったりするのを楽しみにしていたが、今は脚が弱って、ヨロヨロと100メートルぐらいがやっとだ。
 一日中、ご主人か奥さんが見守ってくれ、2、3時間おきに排泄のため、外に抱いて連れ出してくれる。その後は、どちらかに寄りかかって寝る。夜も、交代で一緒に寝てくれるので安心だ。本当によく世話してもらっている。
 この家にもらわれてきたのは、ご主人と奥さんの退職後。よく来る孫や甥、姪などに囲まれて遊んだり、散歩の際に保育園に寄り、園児たちと遊んだりして楽しい毎日を過ごしていた。
 ところが4歳の時に突然痙攣が起こり、検査の結果、門脈シャントという血管の病気とわかった。手術もしたがうまくいかず、それ以後は薬漬け。車で2時間かけ、専門医に通っている。
 最初は1週間おきだった通院も、2週間、1カ月、2カ月とだんだん安定してきて、半年おきでよくなった。薬が合ったのと、ご主人たちの世話のおかげだ。
 ところが2年前の夏、今度は激しい痙攣がきて、癲癇を発症した。以後、ひと月ごとに癲癇の発作が起きるようになってしまった。
 発作が起こると、痙攣が治まった後も2時間ほどは夢遊病者のようにウロウロし、その後やっと正気に戻る。しかし、脚はほんとにヨタヨタだ。
 ときどき奥さんは、「お前がいない生活は考えられない。いなくなったらどうしましょう」とおっしゃる。
 まさかすることがなくなると、二人が喧嘩ばかりするようになるわけでもなかろうが、お言葉に甘えて、できるだけ頑張ってみようと思っている。

(黒田幸衛さん 岡山県/78歳/宮司)

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