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最後まで深化を続ける「ジャンヌ・ダルク」

文・中島かずき

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 先週は、前半、嘉穂劇場に『鋼鉄番長』を観に行き、後半は赤坂ACTシアターで『ジャンヌ・ダルク』の東京公演の終盤戦に立ち会っていました。

 劇団☆新感線の公演が嘉穂劇場でかかることについての個人的な思い入れは前回たっぷり書かせてもらいました。
 独りよがりにならなければいいなと思っていたのですが、実際に舞台に立った役者達も、けっこうこの小屋を気に入ってくれたようで、嬉しいですね。
 そういえば、映画監督の樋口真嗣さんも、嘉穂劇場に観に来てくれました。
 彼は仕事が詰まっていて、東京大阪での本公演を見損なっていたようで、一念発起して、足を伸ばしてくれたのです。
 彼もこんな形で昭和の芝居小屋が残っているのは知らなかったようで、公演後、劇場の様子を興味深げに見ていました。
 ついつい得意げに案内してしまいましたね。別に、自分の物でもなんでもないのに。でも、自分の郷里にこういうものが残っていて、それを今まで知らなかった人達が楽しんでくれるのは嬉しいものです。

 できれば千穐楽まで滞在していたかったのですが、東京では『ジャンヌ・ダルク』が公演中です。
 言ってみれば、『鋼鉄番長』は人の芝居。自分の芝居が上演されているのに、そちらをほっぽっているわけにはいきません。
 まあ、脚本家なので、劇場に行かなくても誰かが困るわけではないのですが、自分が納得がいかない。終盤に入り、芝居がどのくらい深化したか、大いに気になるのですね。
 演出の白井さんも最終日まで立ち会って、芝居のチェックをしているし。
 商業演劇や新劇の演出家の中には、幕が開くと一切劇場に顔を出さなくなる人もいます。他に仕事があるので仕方ないのかもしれませんが、小劇場演劇上がりの僕やいのうえひでのりなどは、最後の最後まで本番に立ち会わないと気持ちが悪い。気になるところは最後まで直したい。若い頃からそうやってきたので、習性になっているのですね。
 白井さんも小劇場出身。作風は違うけど、芝居に対しての姿勢は同じようなメンタリティを持っているし、そこが僕としては信頼出来るところです。

 期待通り、終盤に向かって、ベテランの役者達は役を掘り下げ、若手も何とかそれに食らいついていこうとしている。
 初舞台の堀北真希さんは、あんな細い身体だし、体力的な心配をしていたのですが、最後までのどを枯らすこともなく、堂々と主役のジャンヌの二年間を全力疾走していました。
 何より彼女は声がいい。
 クライマックスで、ジャンヌが静かに、でも力強く自分の信念を語る台詞が客席に染み通っていくのを見ていると、この声は武器だなあと思います。
 まだ22歳。これから経験を積めば、映像だけでなく舞台でもいい仕事をするだろうなと期待しています。
 新感線も頑張っているが、自分が関わった作品も面白いぞと胸を張って言えるのは、とても幸せなことだと思います。

 まだ、『ジャンヌ・ダルク』の大阪公演が残ってはいるのですが、年内の更新は今回が最後。
 みなさんもよいお年をお迎え下さい。


(更新 2010/12/23 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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