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「SFは絵だねえ」。『アバター』鑑賞記

文・中島かずき

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『アバター』、とうとう『タイタニック』を抜いて世界興行収入第一位になりましたね。それもわずか39日間というから驚きです。
 こういう、筋立て的には古典的なSF映画が、これだけのお客さんに支持されるというのは、どういうことなんだろうと考えてしまいますね。

 僕も先日、109シネマズ川崎のIMAXで観てきました。
 樋口真嗣さんが「どうせ観るなら、IMAXだ」と熱く語っていたので。
 噂に違わずすごい人気で、1月の連休で行こうとサイトをのぞくと、二日前でもう売り切れ。改めて早めに予約して、次の土曜日にいってきました。
 
 3Dメガネをかけて、長編映画を観るのは初めての体験です。
 ずっと前に、東京ディズニーランドで『キャプテンEO』を観て以来じゃないかな。 本篇上映前に流れる『アリス・イン・ワンダーランド』の予告の3D感が強すぎて、「いかん、こんな調子で2時間40分も映画を観たら、3D酔いするんじゃないか」と焦ったのですが、『アバター』の3Dは、そこまでではなく、最後まで楽しめました。立体感でびっくりさせるというよりも、観客もその世界にいるように感じさせるための技術という意図で使用している感じでしたね。
 
 観ながら思い出していたのは、「SFは絵だねえ」という野田昌宏氏の言葉。
 惑星パンドラという異世界が、CGにより具現化しています。
 徹底的に作り込まれた異世界には、監督ジェームズ・キャメロンの執念すら感じました。映像を観ているだけで圧倒されます。
「昔のSFマガジンの表紙のイラストで、こんな感じの絵があったなあ」とか「野田さんが紹介していたアメリカのSFパルプマガジンの世界だ」とか、SF好きだった10代の頃が思い出され、無性に興奮して目頭が熱くなりました。
 
 ストーリーはいたってシンプルです。
 異文化と出会った主人公は、その文化に触れ合うことで、いつしかそちらに同化し、彼らの文化を潰そうとする以前の仲間達と戦うことになる。
 パンドラの先住種族達が自然と調和して生きていることから「ジブリアニメのようだ」とか「自然と調和して生きるというテーマが表面的だ」などという批判も目にしますが、この話はオールドスタイルのSFでは定番だったテーマだった気がします。
 僕は観ている最中は「『地球の長い午後』の世界観で『火星のプリンセス』やってるなあ」と思っていたのですが、あとになってハインラインのジュブナイルSFである『赤い惑星の少年』の肌触りに似ているなあとも思い直しました。
 そういう古典的なSFのストーリーラインを、最新のCG技術で徹底的なリアリティある映像に作り上げる。そこが楽しいのだなと感じました。
 
「3Dで観ることに意義のあるイベントムービー」という感想を述べた知人もいましたが、僕にはそうは思えない。
 むしろ途中からは「3D邪魔」と感じていました。
 これだけ作り込んだ世界だから、ディティールまで細かく観たくなったのです。
 
 もちろんこれだけ世界中でヒットしているのは、3D方式というイベント性が付加されているからだとも思います。
 普通の上映形式なら、多少出来はよくても、「ただのSF映画」で片付けられていたかもしれない。
 この辺はキャメロンのうまいところだなあと、感心してしまいます。


(更新 2010/1/28 )


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中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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