<ライブレポート>AK-69「まさか5回も武道館に立てるとは」 感謝とともにオーディエンスを鼓舞
<ライブレポート>AK-69「まさか5回も武道館に立てるとは」 感謝とともにオーディエンスを鼓舞

 AK-69の5度目となる日本武道館公演【AK-69 START IT AGAIN in BUDOKAN】が2022年4月23日に行われた。

 今回の公演は武道館の中央部にステージが設けられたセンターステージでの公演となり、VIP席のあるアリーナを含め、360度からそのステージが目撃される構成だ。そしてステージの床面にもLEDが埋め込まれ、ステージ自体も演出の一部というビジュアルでも魅せる公演となった。

 18時の開演時刻になるとDJブースにはDJ RYOWが登場し、洋邦のヒップホップを織り交ぜたDJプレイで会場を温め、本編への期待を高めていく。

 そしてラスト曲となるDJ RYOW「WHO ARE U? feat. TOKONA-X」が掛かり終わると同時に会場は暗転し、ステージまで続く花道には聖歌隊が登場。荘厳な雰囲気でステージは幕を開けた。中央ステージを覆う幕の中で純白の僧衣姿のダンサーが踊り、その中心にAKが登場すると、その幕が切り通され、ライブは「Konayuki」、そして「The Independent King」からスタート。そのまますべてのオーディエンスが「69」のハンドサインを掲げる中、「IRON HORSE -No Mark-」へなだれ込み、ライブのテンションは一気に上がっていく。

 「まさか5回も武道館に立てるとは思わなかった。今日はこれまで俺が身につけてきたペンダントトップのほとんどを着けてきたけど、17歳で初めて買ったペンダントトップを、この場に5回も連れてこられるとは思わなかった。一つのことを思い続けることがどれだけ大切か、そして思いを揺るがせなければ、道は拓けることを教えてやる!」というメッセージから、今から20年前にB-ninjah & AK-69としてリリースされた「The One Time - Wake Up My Homies -」をパフォーマンス。彼の原点中の原点であり、明け透けに権力批判を歌う曲の披露はリスナーの度肝を抜いたことだろう。

 そして東海/名古屋の名前をヒップホップの日本地図に大きく記した“トウカイテイオー”こと故TOKONA-Xのフレーズを使ったDJ RYOW「ビートモクソモネェカラキキナ feat. AK-69」。「あいつ(TOKONA-X)を武道館に連れてきた。「Xを掲げろ」というAKの言葉に、オーディエンスが腕をクロスさせXサインを作り掲げる中、“ヤングトウカイテイオー”である\ellow Bucksを呼び込み「I'm the shit feat. \ellow Bucks」。そしてAKの名前をシーンの中で確実なものにした「Ding Ding Dong~心の鐘~」と、東海地方のヒップホップを、楽曲を通してリプレゼントしていく。

 そこから続けて「Pit Road feat. ANARCHY」「Racin' feat. ちゃんみな」「Thirsty feat. RIEHATA」と、昨年リリースのアルバム『The RACE』収録の客演曲にゲストを呼び込み、矢継ぎ早に披露。RIETAHAダンサーズは、ダンスパフォーマンスでも魅せ、ステージに華を添えた。

 そして再びAKはソロでステージに立つと、4月8日リリースの「Break through the wall」を、ステージを彩るLEDとともに、ドラマティックに展開。また、現在の世界情勢やそこで起きる悲劇を語り、「ひとりひとりが人を思いやる気持ちを、自分が正義だと思うときこそ、思い出して欲しい」という言葉から、AIを呼び込み「Never Let Me Down feat. AI」「It's OK feat. AI」とライブを展開していく。

 続くパートでは本公演の一曲目を当てるというキャンペーンに当選したオーディエンスに直接ステージ上から電話し、「You Mine」「BECAUSE YOU'RE MY SHAWTY」とラブソングに展開。シリアスなムードの強いこの日のライブに、ポップな彩りをステージに加えた。

 そしてこの日発売となる「Come Inside feat. Yo-Sea」では、オーディエンスにビデオ撮影を許可し、オーディエンスの掲げるスマホのライトに照らされながら新曲をパフォーム。そしてSALUを呼び込み「Victory Lap feat. SALU」に続いては「声が出せないからこそ、この曲で一緒に行こまい」という言葉から「Cut Solo」を披露し、左右に腕を振るアクションで会場は一体化した。

 そして亡き父親に捧げる「ICU、「Stronger」から、AKの立ち上げた会社<Flying B>への感謝を語りつつ、そのレーベルに所属するXinとCITY-ACEを迎え「Flying B REMIX feat. Xin, CITY-ACE」を披露し、会場の熱気は最高潮に達した。

 「俺たちはここから更に動き出す。次の発表を楽しみにしてて。そして大事なメッセージを伝えたい。俺は、このまま行くと日本はまずいことになると思ってる。これだけは言っておきたい。日本はかつてものすごく強い国だった。賢い国だった。でも今はどうだろう。30年間も経済成長してない。なんでだと思う? 経済学だけではなく、心理学も含めて出た答えは、日本の国民性だった。『出る杭を打つ』『人に判断を委ねる』。それが経済成長をしない大きな理由なんだ。そしてこの国は子供を守ろうとしてない。子供を守れるのは大人しかいない。これからの子どもたちを守らないといけない。子どもたちは大切な財産だから、子どもたちの未来を作ろう。この日本をもう一回立ち上げ直そう」というシリアスなメッセージから、この日のラスト・ソングとなる「START IT AGAIN」。

 「俺は止まらねえぞ」という言葉を残し、AKはステージを後にした。そして最後にスクリーンに映されたメッセージは、多くのオーディエンスの胸に届いただろう。

Text by 高木"JET"晋一郎
Photos by cherry chill will.