<ライブレポート>アジカン、[Alexandros]、miletが春のリベンジを果たす【FM802 REQUESTAGE 2021】Day2が開催
<ライブレポート>アジカン、[Alexandros]、miletが春のリベンジを果たす【FM802 REQUESTAGE 2021】Day2が開催

 8月19日、大阪にて【FM802 SPECIAL LIVE 紀陽銀行 presents REQUESTAGE 2021】が行われた。この【REQUESTAGE】は地元のラジオ局・FM802が2002年にスタートさせたもので、今では春恒例のイベントとなっている。今年も当初は4月24・25日の2デイズが予定されていたが、緊急事態宣言により2日目の公演をやむなく断念。その後振替公演が決定し、ようやくこの日の開催にこぎつけた。
もちろん今回の会場は4月24日と同じ大阪城ホールで、十分に感染症対策が取られるなか、開演前にはFM802のDJである大抜卓人、落合健太郎、加藤真樹子が登壇。【REQUESTAGE】に込めた願いや、イベントがたどった今日までの道のりなどを話して客席を温めると、約4か月を経てついに止まっていた時計の針が動き出した。

●milet
暗闇の中、ホワイトとシルバーの衣装でシルエットを浮かび上がらせると、まずは歌で勝負!とばかりに力強く伸びやかに「us」を響き渡らせ、いっきに会場のテンションをアップ。続く「inside you」では重厚感も交えて物語を紡ぎ、体をよじらせ発する声でオーディエンスを没入させ、さらに次の「Ordinary days」では徐々に熱を帯びるボーカルと天使のはしごにも似たライトの相乗効果で神秘的な空間を作り出す。だが、MCとなれば飛び切りチャーミング。昨年秋からFM802の「MUSIC FREAKS」でDJを務めている彼女は、"私ももうFM802の一員なんで"と語り、番組については"おもしろいでしょ(笑)? (番組で)鍛えられてmiletおもしろくなったねって言われるんだよね。あ~うれしい!"とご機嫌。加えて、"骨を埋めるなら大阪かフランス"と関西愛を爆発させ、それを表す曲「レッドネオン」へ。今回は歌詞にある梅公(梅小路公園)を、彼女が大好きだという動物園のある場所・天王寺に替えて大阪バージョン。どこかブルージーにも聴こえる滋味深い歌声にもう一度人々は立ち尽くすが、このあとはアップテンポなナンバーをつないでスパートへ。ステージを走り回って、くるくるとターン。ジャンプもしてパーティモード全開だ。清涼感のあるボーカルは爽快なサウンドにのって上昇気流を生み、ラストは「Grab the air」でいきいきとドラマチックに。約40分間、たっぷりと躍動する姿を見せつけたmiletだったが、何と言ってもとどめは去り際の "おおきに! ほなまた?"とまぶし過ぎるスマイル。これには全員が"即陥落"だったはず。

●[Alexandros] 
7月末に全国ツアーを終えたばかりの彼らは、勢いそのままに4度目の【REQUESTAGE】へ。SEや映像に不敵なプレイを重ねて登場から大いに仕掛け、初っ端から息をのませると「For Freedom」で猛攻開始。それぞれの音がたきつけ、さらに変拍子のユニゾン。揺さぶりも十分だが攻撃の手は緩められず、早くも人気の2曲をシームレスで。一筋縄ではいかせないもののポピュラリティも共存させるナンバーにのせられ、人々は手をアップ&ダウン。美メロもグルーヴもスケール感も味わい尽くす。「風になって」では川上洋平(Vo&G)の"大阪、いつか一緒に歌おう!"のシャウトも相まってフロアは一層ヒートアップ。すると再び世界観を濃くする映像とSEを挟み「Beast」から後半戦へ。観客を弾ませながら骨太かつエッジーに突き進み、膝を折って放つボーカルも突沸。だが、まだまだ!と煽るようにハイトーンが切り裂く「閃光」のスピード感でファンを突き動かし、聞こえないシンガロングを巻き起こす。そしていよいよ「PARTY IS OVER」のセンチメンタルな質感で幕?と思いきや、壮大に奏でてロングトーンも轟かせれば、スタジアムのムードが広がって、"大阪のかわい子ちゃんたちに捧げます!"(川上)と「Dracula La」。最後は茶目っ気ある彼ら流のポップで"かわい子ちゃん"をメロメロにし、ハッピーな余韻を残していった。歓声のないライブだけに隠されたギミックもキラリとした全7曲は、硬軟自在にMCなしで駆け抜けられ、濃密なワンマンさながら。終了後、現れたFM802のDJ・中島ヒロトと大抜卓人も"すごかったねー!"と思わず顔を見合わせていた。

●ASIAN KUNG-FU GENERATION
トリを務めるのは【REQUESTAGE】最多出演、今年結成25周年の猛者。その第一手はどっしりとエキゾチックに「ダイアローグ」で、聴く者をスッと引き込み集中を高めたら、次にキラーチューン「リライト」を投下し、一瞬にして会場を最高潮に。"あの衝動"にかき立てられ、拳が続々と突き上がる。すると"自分らしく楽しんでくれたら……"と後藤正文(Vo&G)が和ませて今度は新曲&名曲へ。「エンパシー」の美しい旋律と詞の深い視点はとうとうたる流れを生み、「Re : Re :」の時を経ても変わらぬ焦燥感で加速。大画面にはメンバーの笑顔が映し出される。そんな空気感はMCでも……。後藤は全国津々浦々とはいかない11月の25周年記念ツアーについて、"焦ってやればいいってもんでもないから。ゆっくり時間をかけてみんなの住んでる街へ行けたらいいなと。タフな時代だけどそれぞれ朗らかに生きてまたどこかの街で一緒に過ごせたらなって"と、コロナ禍で不安に駆られ硬くなった心を解きほぐしてくれる。さらに思いは音楽で!と「君の街まで」をセレクトしてそのみずみずしさで満たしたら、またもや名曲「ソラニン」の疾走感と抑揚で普遍の青い情景を描いて、ついに最終の「今を生きて」へ。シャッフルビードとコーラスが観客を跳ねさせ、穏やかな日常の風景を脳内再生させれば幸福感も増し、見れば前出の後藤の言葉どおり誰もが自身のスタイルで豊かな時間を享受。まるで"アジカンの魔法"を見るかのようだった。
当然、魔法にかかったファンはアンコールの手拍子。再登場した後藤は"(感染症対策で)帰りに感想を言えない寂しさもあるけど、またきっとみんなでワイワイやれる日は帰ってくると思うから、その時どこか幸せの場所で会えたらうれしいです"と述べ、今日を未来へとつなぐ。そして【REQUESTAGE 2021】を締めくくるのは、もちろん「君という花」。FM802 2003年11月のヘビーローテーションだったこのロックは、今も衰えることのないパワーで芯からしびれさせ、2階最後方の人も両手を掲げて体を揺らす。ただ今夜は当時とは違う強さと優しさをまとい、終演後には温かな拍手が長く続くとともに柔らかな表情が会場中にあふれた。

ちなみイベントの転換中は一部上記にあるようにFM802のDJが代わる代わる姿を見せ、アーティストと交流のある彼らならではのナビゲーションで楽しませたほか、プレゼント企画などもあり最初から最後まで退屈知らず。来場者は3組のパフォーマンスだけでなく、約3時間を余すことなく満喫したに違いない。

なお今回の模様は、9月3日(金)20:00よりFM802の特別番組【FM802 SPECIAL LIVE 紀陽銀行 presents REQUESTAGE 2021 SPECIAL】にてオンエアされる。

Photo by 渡邉一生
Text by 服田雅子

◎公演情報
【FM802 SPECIAL LIVE 紀陽銀行 presents REQUESTAGE 2021】
8月19日(金)<終了>
会場:大阪城ホール
https://funky802.com/requestage/

◎番組情報
【FM802 SPECIAL LIVE 紀陽銀行 presents REQUESTAGE 2021 SPECIAL】
放送日時:9月3日(金)20:00-21:00
出演:ASIAN KUNG-FU GENERATION、[Alexandros] 、milet
DJ:大抜卓人
8月19日 【REQUESTAGE】 ライブ音源のほか出演アーティストのコメントもOA