<ネタバレ注意>謎が深まる『ワンダヴィジョン』、ポップな曲の裏側に謎を解くヒントあり
<ネタバレ注意>謎が深まる『ワンダヴィジョン』、ポップな曲の裏側に謎を解くヒントあり

 マーベル・スタジオが贈る初のオリジナル・ドラマ・シリーズ『ワンダヴィジョン』がDisney+で好評配信中だ。現在、第8話まで配信されており、ワンダとヴィジョン、ピエトロが仲良く暮らす愉快なストーリーから一転、突如サイコスリラーのような恐ろしい展開へ進み、3月5日配信の最終話に期待が高まっている。

 物語が進むにつれて本格的なシットコム(シチュエーション・コメディ)の裏に不可解な“謎“が見え隠れし始め、単なるシットコムで終わらない、観客の予想を見事に裏切る異色の『ワンダヴィジョン』は、毎週ファンの間で様々な推測が飛び交い、米会社Parrot Analyticsの調査で“世界で今最も人気があるドラマ・シリーズ”として注目されている。

 一つ一つの不可解なシーンがこの先のストーリーを知る重要な鍵となっているのだが、それ以外にも謎を解くヒントとなりそうな要素はたくさんありそうだ。『ワンダヴィジョン』の制作陣は、テレビ史全体におけるシットコムを調べつくした結果、ある重要な手掛かりに気が付いた。それはテーマソング。テーマソングのスタイルは長年の歳月を経て変化しており、各時代の名刺代わりといっても過言ではない。時代ごとに沿ったテーマソングを入れていくことで『ワンダヴィジョン』が追い求めていた真実味や、クラシックなシットコムがルーツであるという事実が強調されている。

 その重要な任務を引き受けたのが、『アナと雪の女王』(2014)の主題歌「レット・イット・ゴー~ありのままで~」で世界にその名を轟かせたロバート&クリステン・アンダーソン=ロペス夫妻だ。作曲家として歴史に名を残す偉業を成し遂げた2人が満を持して作り上げた本場ブロードウェイ仕込みの楽曲たちが、クラッシックな映像に華を添え、往年のシットコムの雰囲気が漂う全く新しいマーベル作品の誕生を予感させる。ここからは、スタッフ陣が力を入れているテーマソングに注目してみよう。(以下、ネタバレあり。まだ最新エピソードを観ていない方はお気をつけください。)

★第1話「公開収録でお送りします」
 長い恋愛の末、晴れて結婚したスカーレット・ウィッチことワンダ・マキシモフとヴィジョンが「新婚ほやほや」と書かれたかわいい小さな車に乗って、とある郊外の街に引っ越してくるシーンから始まる本エピソードのテーマソングは<新婚さんがやってきた/ごく普通の夫婦が/都会を離れ郊外の静かな街へ/小さな町に住む魔法使いの奥様/人造人間の旦那様/どんなふうに暮らすのか/見たことのない愛のカタチ>と、まさに二人の幸せな新生活のスタートを思わせる歌詞に。実際に説明はされていないのに二人がどんなに愛し合っているかが、このテーマソングだけで伝わってくる。クリステンによると、第1話のテーマソングは“テレビジョンの夜明け”を想起させるものにしたいと考えていたという。

★第3話「カラー放送」
 ワンダが双子を妊娠し、理想の家族に期待膨らむ第3話では<素敵ななにかが/もうすぐ生まれそう/こんなことが本当に二人に起こるなんて/期待でワクワク/不安でドキドキ/でも君と一緒ならなんでもノリノリさ/二人で力を合わせ命を生み出そう>と新しい家族の誕生を喜ぶ夫婦の気持ちを歌い上げている。ロバートは「アメリカン・シットコムの明るい雰囲気に、このストーリーが携える深い不安感がミックスされている。様々な問題がこれでもかと次から次へ容赦なく降りかかってくる中で、愛のあるハッピーな家族を保とうと努力するのです」と明かす。

★第5話「問題エピソード」
 徐々に二人の世界の“異変”にヴィジョンも気づき、根底に潜んでいた暗い影が2人の生活を狂わせ始める。曲自体は明るく歌っているものの、<人生のヴィジョンを携え世界をさまようあなた/でも時が経つとわかる/待つのも大事だと/様々な力が二人を引き裂く/でも何も怖くない/あなたさえいれば>と、歌詞に不安な心情が表れ始める。

★第6話「ハロウィーンの不気味な夜に」
 これまでの幸せな様子から一変、<カオスに逆らうな/やったことを後悔するな/ゲームに振り回されるな/お楽しみはこれから/時には大混乱に/うつろいやすい世界/すべては幻想さ/座ってショーを楽しんでとにかく続けよう/こんな歪んだ毎日でもこのまま続けよう/先がまるで読めなくても/次はだれが登場するのかな>と不穏な雰囲気に。テーマソングもワンダの息子トミーがカメラで家族を撮影していくという演出で、謎だらけの歌詞だが、気になるのは<次はだれが登場するのかな>という部分。第5話で『X-MEN』シリーズのピーター(クイック・シルバー)が登場し、大きな話題を呼んだが、ワンダも彼の登場に驚いていたことから、彼女のシナリオになかった展開であることが予測できる。もしかしたら、さらにびっくりするような登場人物がいるのだろうか!?

★第7話「第4の壁を破って」
 第7話では<私はワンダ><ワンダ通り>といったワンダの文字が次々に登場するテーマソングに。この世界すべてがワンダなのだと思わせる一方で、その中に「ワンダが何をしているのか私はお見通しだ」という文が映り、ワンダの世界でありながら明らかに外部から誰かが見ていることが伝わる。最後にハートマークが記されたカレンダーが映り、第1話にも登場し、二人を混乱させるきっかけとなったこのマークはいったい何を意味するのか? 注目なのは、第7話にはもう一つのテーマソングが存在するということ。隣人のアグネスという役割を演じたのは『ファンタスティック・フォー』に出てくる魔女アガサ・ハークネス。しかもアガサは自ら「すべてアガサの仕業」というタイトルの番組をスタートしてしまう。

★第8話「前回までは」
 アガサの手によってこの世界がどうやって作り出されたのかが明らかに。本エピソードにはテーマソングがないが、ワンダは過去に『奥さまは魔女』や『アイ・ラブ・ルーシー』といったシットコムを見ていた様子がうかがえる。これまでのテーマソングの歌詞にはまだまだ謎な部分が多く、これだけでは終わらなさそうだ。

 シットコムやサイコスリラーなど、MCUにしか成せない全く新しいユニークなジャンルの数々で観客を楽しませ、ドラマの枠を超えた映画並みのスケールを描き続ける『ワンダヴィジョン』。黒幕が登場し、クライマックスへ盛り上がりを見せる本作は、ついに残すところ最終話のみ。衝撃の展開が待ち構える第9話は3月5日配信。

◎作品情報
『ワンダヴィジョン』
ディズニー公式動画配信サービスDisney+で配信中
監督:マット・シャックマ
出演:エリザベス・オルセン、ポール・ベタニーほか
(C)2021 Marvel