BTS【Love Yourself: Speak Yourself】ワールド・ツアー最終公演レポート「自分を愛する方法を見つける僕らの旅は続く」
BTS【Love Yourself: Speak Yourself】ワールド・ツアー最終公演レポート「自分を愛する方法を見つける僕らの旅は続く」

 今年の【アメリカン・ミュージック・アワード】の<ツアー・オブ・ザ・イヤー>部門でノミネートされているBTSが、韓国・ソウルで【Love Yourself: Speak Yourself】ワールド・ツアー・ファイナルを2019年10月29日に開催した。

 業界トップのアーティストであると同時に、完璧主義のパフォーマー集団でもあるBTSには常にプレッシャーがかかっているが、文字どおり“The Final”と題された記録破りのツアーの最終公演には、これまで以上の迫力で終了し、ライブ・シーンにおける彼らの立ち位置を確固たるものにするという大きな期待がかけられていた。

 ライブ開始の数時間前から会場であるソウル・オリンピック・スタジアムに集まったファンは、入場開始を待つ間“BTS遊園地”と化した敷地内のアトラクションを楽しんでいた。セルフィー撮影に適した位置に貼られたメンバーの巨大なポスターの数々、来場者が一緒に歌いながら待ち時間を過ごせるようミュージック・ビデオが絶え間なく流れる大画面、ファンがグループに個人的なメッセージを書くことができる“A.R.M.Y.・ウォール”、メンバーのデジタル画像と一緒に写真撮影ができるフォト・スタジオ、そしてBTSとUNICEFの“Love Myself”キャンペーンについて詳しく知ることができるブースなどが設置され、1日中楽しめるような工夫がされていた。

 最終公演も『Map of the Soul: Persona』の「Dionysus」で幕が上がり、ギリシャ神話がモチーフの舞台中央に据えられた玉座に着席した7人のメンバーが堂々と登場した。次の「Not Today」では多数のバック・ダンサーを従えたパワフルなパフォーマンス、続く「Wings」では個々のフリースタイルのスキルと、広いステージを楽しく親しみやすい空間にする類まれな能力を発揮していた。

 内容はこれまでの【Love Yourself: Speak Yourself】ツアーと大きく異なることはなかったものの、きらびやかな花火、スタジアムを熱くするほどの特殊効果、そして一新されたメンバーの衣装がファイナルとしての特別感を演出し、メンバー個々のパフォーマンスもヴィジュアル面とヴォーカル面共にこれまでで一番の仕上がりを見せていた。

 BTSのラッパー陣はステージでエネルギッシュな存在感を発揮。ジェイホープは、自身の伝わりやすく洗練された魅力を体現するかのような真っ赤なスーツを着こなして「Trivia: Just Dance」を披露し、RMは熱狂する観客をフィールグッド・アンセムである「Trivia: Love」で一旦リラックスさせ、カジュアルなセーター姿のシュガはカメラに向かって甘いスーパースターの笑顔を振りまいていた。

 一方、ヴォーカリストたちは過去のパフォーマンスのさらに上を行く実力を見せ、ジミンが「Intro: Serendipity」を生き生きと難なく歌い上げれば、ジョングクはワイヤーロープに吊り下げられながらも惚れ惚れするアドリブを繰り出していた。Vによる「Singularity」のムーディーなパフォーマンスはまるでミュージック・ビデオのようで、「Epiphany」を披露したジンは、最年長らしい大人の魅力で観客を魅了し、画面に彼の横顔が映し出されるたびに大きな歓声が上がっていた。

 このような極上のパフォーマンスもさることながら、最終公演で一番感動的だった場面はメンバーがファンに最後の挨拶をした時だったかもしれない。ジェイホープは、「いつもだったらライブの最後の方になると、もっとうまくできたかもしれない箇所について考えてしまうんだけれど、今回はそういうことを考えなかった」と満足そうにコンサートを振り返り、Vは、「今日はみんなに本当に感謝しているとだけ伝えたい」とファンに礼を述べ、ジョングクは「新たなエネルギーを蓄えて戻ってくる」と約束した。

 そしてリーダーのRMの番になると、普段の思慮深く落ち着いた彼が涙で声をつまらせながらファンに思いを伝えた。「“花様年華 pt. 1”に対する素晴らしい反応を得たあと、みんながこの旅に参加してくれるか心配だった。でも今は、“自分を愛しているかい?”と誰かに聞かれたら、僕は“愛しているよ”って言えると思う」と、彼は『Love Yourself』シリーズのメッセージを自分も実践できていると語った。

 RMはさらに、「【Love Yourself: Speak Yourself】はここで終わるけれど、自分を愛する方法を見つける僕らの旅は続くから、一緒に手を取り合って前進しよう。このツアーのあとも、RMはRMらしく、BTSはBTSらしく、そしてA.R.M.Y.の名の下に君は君らしくいられたらいいなって思う。僕が書いた、たった一つの言葉、一つの歌詞でも、みんなが自分を愛するために使ってもらえたらと願っている。【Love Yourself: Speak Yourself】ツアーが終わってしまったことが悲しい。“愛している”よりいい言葉があればいいのにって思うよ。次の曲(“Mikrokosmos”)には、僕たちの宇宙と愛でいてくれるみんなへの感謝を込めて捧げます」と述べた。

 そしてラストの「Mikrokosmos」では、300機のドローンが惑星の形やBTSとA.R.M.Y.のロゴを空に浮かび上がらせるライト・ショーを展開し、メンバーがフロートで移動しながらスタジアム後方のファンに手を振り、ステージに戻ると最後の一礼をした。

 BTSがこのツアーで、そしてこれまでのキャリアで成し遂げたことは、彼らをどう受け止めるべきなのかいまだに考えあぐねている欧米の音楽業界に参入した、“勝ち目のない”アーティストとしてすでに受賞にふさわしい。その壮大さ、ファンとの関わり方、ステージ演出と音楽は、世界中ですでに200万人の観客を圧倒してきたが、【Love Yourself: Speak Yourself】ワールド・ツアー・ファイナルに込められたさまざまな感情が、BTSが“年間最優秀ツアー”の称号を受けるにふさわしいということを表していた。これは単なる成功を収めたコンサートではなく、BTSの発展し続ける芸術性と成長を続ける感情的知性が、彼らに(欧米の音楽)業界を突破させ、その先へと導くだろうという立証だった。

◎BTS【Love Yourself: Speak Yourself】ワールド・ツアー・ファイナル セットリスト
1. Dionysus
2. Not Today
3. Wings
4. Trivia: Just Dance
5. Euphoria
6. Best of Me
7. Intro: Serendipity
8. Trivia: Love
9. Boy With Luv
10. Dope/Silver Spoon/Fire/Run
11. Singularity
12. Fake Love
13. Trivia: Seesaw
14. Epiphany
15. The Truth Untold
16. Tear
17. Mic Drop
18. Idol
19. Anpanman
20. So What
21. Make It Right
22. Mikrokosmos