『ディス・イズ・ザ・プレイス』ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ(EP Review)
『ディス・イズ・ザ・プレイス』ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ(EP Review)

 今年6月にリリースした『ブラック・スター・ダンシング』に続く2019年第二弾EP『ディス・イズ・ザ・プレイス』を9月27日に発表した、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ。前作は、ヌーディスコ調の「ブラック・スター・ダンシング」、クラシカルなサイケ・ロック「ラトリング・ローズ」、哀愁漂うアコースティック・メロウ「セイル・オン」と3曲それぞれテイストの違う曲が収録され、いずれも高い評価を得た。

 本作『ディス・イズ・ザ・プレイス』も、新曲3曲+リミックス2曲の計5曲が収録された、かつての12インチシングルを彷彿させるコンパクトな仕上がり。年内リリース予定の第三弾EPも、おそらくこの形式に沿ったものかと思われる。

 前月に公開したタイトル曲は、ノエルが「マンチェスター的」と公言したとおり、ダンサブルなビートを基としたサイケデリック・ロック。享楽的な女性のバックコーラスも相まって広がるノエル流サイケ・ワールドと、UKレイヴ期をまんま再現したような音作りは、さすがとしか言いようがない。

 音とリンクしたミュージック・ビデオもすばらしく、ノスタルジックな映像とサイケ感たっぷりのバンド・セッションが交差する映像と併せて聴くと、曲の世界観がより伝わる。アシッド・ハウス・ムーブメントを強調したデンス&ピカ・リミックスと、ヒップホップ~ダブ・フレーバーのザ・リフレックス・リヴィジョンも相当カッコいい。

 2曲目の「ア・ドリーム・イズ・オール・アイ・ニード・トゥ・ゲット・バイ」は、浮遊感あるボーカルラインの60年代風サイケ・ロック。ドラム、ベースライン、ボーカル・ワーク全てがかつてのブリティッシュ・ビートを再現したかのようで、リイシューを聴いているかの錯覚に陥る。続く「イーヴィル・フラワー」は、冒頭からギターリフを唸らすファンキーなロック・チューン。ボーカルは単調だが、細やかな演奏こそこの曲の聴きどころ。グランジが頂点を迎えていた90年代っぽい要素もあり、初期のオアシスをイメージする場面も。

 つい先日、何かとお騒がせなリアム・ギャラガーが新作『ホワイ・ミー?ホワイ・ノット』をリリースしたばかりだが、ノエルもバンド・スタイルを活かした独特のグルーヴ感、安定したサウンド・センス、研ぎ澄まされた豊潤なメロディのすばらしい傑作を作り上げた。前作『ブラック・スター・ダンシング』について、音楽誌NMEが絶賛していたのも納得。

 UKチャートでは、1stアルバム『ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ』(2011年)、2ndアルバム『チェイシング・イエスタデイ』(2015年)、そして2017年発表の3rdアルバム『フー・ビルト・ザ・ムーン?』の3作すべてを首位に送り込んでいる、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ。今年リリースしたEP盤を経て、それらに続く4作目のアルバムを発表する予定だが、既にリリースされた2枚のEPからすると、完成度の期待も高まる。

Text: 本家 一成