『ホワイ・ミー?ホワイ・ノット』リアム・ギャラガー(Album Review) 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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『ホワイ・ミー?ホワイ・ノット』リアム・ギャラガー(Album Review)

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『ホワイ・ミー?ホワイ・ノット』リアム・ギャラガー(Album Review)

『ホワイ・ミー?ホワイ・ノット』リアム・ギャラガー(Album Review)


 オアシスの解散を経てリリースされたソロ・デビュー作『アズ・ユー・ワー』(2017年)から約2年振りに発表された、リアム・ギャラガー2作目のスタジオ・アルバム『ホワイ・ミー?ホワイ・ノット』。タイトルは、数年間に展覧会で購入した故ジョン・レノンのドローイングから命名したとのこと。

 大盛況を収めた前作のツアーと並行して、今年6月にイギリスで封切りされたドキュメンタリー映画『リアム・ギャラガー:アズ・イット・ワズ』を撮影。さらに本作の制作にも取り掛かっていたというから、そのバイタリティには感服する。なお、同ドキュメンタリーは、2020年にここ日本でも公開される予定。

 オープニング・ナンバーは、6月に先行シングルとして発表した「ショックウェーブ」。プロデューサーにはお馴染みグレッグ・カースティン(アデル、ベック、ピンク等) を迎え、前作『アズ・ユー・ワー』でも大活躍した、アンドリュー・ワイアットもソングライターとしてクレジットされている。オアシス直結のUKロックともいえるし、 ブルースハープを起用したイントロが60年代ロックっぽくもある。丁寧に作り上げた旋律やボーカル・ワークもすばらしく、ハンガリーのブダペストで撮影された抗議者の群衆をかき分けて歩く、ミュージック・ビデオもシブい出来栄えだった。同曲は、UKチャートで22位まで上り詰め、スコットランドではソロ初のNo.1獲得を果たしている。

 翌7月にリリースした2ndシングル「ワンス」もいい曲。ブルースやカントリーのニュアンスも含む、ノスタルジックなロック・バラードで、アコースティック・ギターとボーカルのシンプルなヴァースから、 ストリングスや鍵盤楽器を加えた壮大な2ndヴァースへと展開する。24人編成のオーケストラと演奏した『MTVアンプラグド』でのパフォーマンスも最高だった。デラックス・エディションに収録された「ミスアンダーストゥッド」も、同系色のアコースティック・メロウ。比較的単調な旋律も、リアムのボーカルがドラマチックな曲調に染め上げる。

 3rdシングル「ワン・オブ・アス」には、前述のアンドリュー・ワイアットに加え、米ブルックリンを拠点とする音楽プロジェクト=アメン・デューンズのデーモン・マクマホンが制作に携わっている。誰かとの間にできた溝を不器用にも埋めようとする歌詞が、(色々あった)ノエルのことを歌っているのでは?との説もあり、モノクロのビデオに登場する少年たちも、兄のポールとノエルをイメージしたものだろう、ともいわれている。ゴシップ誌で散々に取り上げられた兄弟喧嘩も、いよいよ修復の兆しが……(?)意味深な歌詞もさることながら、アクセントになっている弦楽器の演奏と、終盤で登場するゴスペル風のコーラス・アレンジもすばらしい曲。

 チェリー・ゴーストのメンバーとして活躍したサイモン・アルドレッドと共作曲「ナウ・ザット・アイヴ・ファウンド・ユー」、かつてのバンド・サウンドをのっけから畳み掛けるように展開する「ヘイロー」、ミディアム・テンポのサイケデリック・ロック「ホワイ・ミー?ホワイ・ノット」、『モーニング・グローリー』のタイトルにも引けを取らない「ビー・スティル」、サイケの要素を含むキーボード・ソロが印象的なシンフォニック・ロック「オールライト・ナウ」、不安定なオルガンの演奏と、憂いに酔う旋律がプロコル・ハルムを彷彿させる「メドウ」、国の理想像と現状の混乱、無関心な人の様を訴えるように歌った「ザ・リバー」……と、中盤以降も1曲1曲が強力。

 ギターリフとストリングスが重奏する、ハチロクのロッカ・バラード「ゴーン」では、リアムのラナティブが聴くことができる。この曲から繋ぐ、ロッカーとしての意地をみせた傑作「インヴィジブル・サン」~前述のメロウ・チューン「ミスアンダーストゥッド」の流れもいい。最後に置かれた「グリマー」では、解放されたかの如く清々しく歌うリアムのボーカルに浄化される。

 本作に収録されたタイトルは、 米LAでレコーディングされたものがほとんどで、スタッフも前作『アズ・ユー・ワー』と同じメンバーで構成されたという。たしかに、サウンドの基盤自体は変わりないし、ボーカルや歌詞の内容にも、大きな変化みたいなものは感じられない。しかし、本人曰く「同じことを繰り返すことが一番難しい」とのことで、そういった意味合いでは難易度の高い挑戦だったのではないかと思う。いつの間にか47歳という年齢に達していたリアム・ギャラガーだが、相変わらずの名言諸々含め、「今なお現役」とは彼のようなロックスターをいう……の、かもしれない。


Text: 本家 一成


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