『Father of 4』オフセット(Album Review) 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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『Father of 4』オフセット(Album Review)

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『Father of 4』オフセット(Album Review)

『Father of 4』オフセット(Album Review)


 ここ最近は、アーティスト活動よりもゴシップネタで注目を集めている、米アトランタのヒップホップ・トリオ=ミーゴスのオフセット。といっても、2018年は年始にリリースしたミーゴスの3rdアルバム『Culture II』が、年間アルバム・チャート10位にランクインする大ヒットを記録。本作からは、「Stir Fry」(8位)や「Walk It Talk It」(10位)などが、米ビルボード・ソング・チャートでTOP10入りし、フィーチャリング・アーティストとして参加した、タイガの「Taste」(8位)や、コダック・ブラックの「ZEZE」(2位)といったヒットを連発。アーティストとしても第一線であることは、いうまでもない。

 ソロ・アルバムをリリースするタイミングとしては絶好で、本作『Father of 4』は、本来、昨年末に発売される予定だった。2月に延期されたのは、10日に開催された【第61回グラミー賞】のタイミングに合わせたか?との見解もある。というのも、同アワードでは、カーディ・Bが女性ソロ初の<最優秀ラップ・アルバム賞>を受賞するなど、注目の的だったからだ。実際、そのタイミングで発売日を発表するという、公私混同(?)なプロモーションを実施しているわけで、その可能性も否めない。破局報道~復縁と、世間を賑わせているカーディ関連のゴシップ“ネタ”一連も、戦略の一環か……?

 いろんな意味で話題沸騰のソロ・デビュー作『Father of 4』は、タイトルが示す通り、“4人の(子供の)父親”というテーマで作られた16曲による意欲作。カバー・アートは、生まれたばかりのカルチャーちゃんを抱きかかえたオフセットを中心に、3人の子供たちが周りを囲んで写る、まさに“ファザー・オブ・フォー”というタイトルまんまの仕上がり。この写真を許可したことや、グラミーでのラブラブっぷりから、カーディとの関係は良好なことが伺える。

 そのカーディとは、12曲目の「Clout」で共演。記せないほど卑猥な言い回しでラップするスタイルは、ママになっても相変わらずで、曲中にはデスティニーズ・チャイルドの「Say My Name」が引用されている。プロデュースは、サウスサイドとキュービーツの2人。彼らは、「Motorsports」(2017年)ソックリの「Made Men」と、トラヴィス・スコット&21サヴェージの2大ラッパーが参加した「Legacy」も手掛けている。サウスサイドは、アルバムのトータル・プロデュースを担当。

 そのサウスサイドと共に、本作の中心的プロデュースを務めたのが、メトロ・ブーミン。メトロ・ブーミンは、ミーゴスのブレイク曲「Bad and Boujee」(2016年)や、グッチ・メインにフィーチャーされた「I Get the Bag feat. ミーゴス」(2017年)などを手掛けた、オフセットとの関わりも深い売れっ子プロデューサーで、両者がコラボした「Ric Flair Drip」も、ラップ・チャート8位の大ヒットを記録したばかり。発売1週間前に公開された先行シングル「Red Room」も、それらに通ずるミーゴスっぽいトラップで、子供たちに向けてではなく、父親のいない環境で育った自分自身の過去について歌われている。

 その他、ゼイトーヴェンがプロデュースした、クエヴォとのコラボ曲「On Fleek」や、「I Get the Bag」の続編的なグッチ・メインとの再タッグ・ソング「Quarter Milli」、そのグッチ・メインやガンナ、21サヴェージなど、本作参加のアーティストなどを手掛ける米ミシシッピ州出身の音楽プロデューサー=ダフボーイによる「Don't Lose Me」、ドレー・ムーン(ビヨンセ、ドレイク、フューチャー等)が制作に参加した「After Dark」など、サウンド的には“まんまミーゴス”で、若干のマンネリ感はあるものの、見方を変えれば期待通りのアルバムといえる。上記のゲスト以外では、タイトル曲に同郷のベテラン=ビッグ・ルーベが 、レトロ感を醸し出す「North Star」にはシーロー・グリーンが、どっぷり黒い「How Did I Get Here」にはJ.コールがクレジットされた。

 本作の聴きどころは、最新のトラックでもゲストの豪華さでもなく、素顔をさらけ出した、各曲に込められたメッセージ。これらを制作中、涙を流さずにはいられなかったというから、その想いも“うわべ”的なものではないのだろう。「音楽を続けていることは、すべて子供たちのため」自分が父親の愛情を受けて育たなかった分、自分のすべてを子供たちに与えてあげたいという、父としての顔が存分に込められた、今のオフセットにしか作れないソロ・アルバム。そういった意味では、十分オリジナリティにあふれている。

 米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”で1位を獲得した、『Culture 』(2017年)、『Culture II』(2018年)に続く、ミーゴスの4枚目となるスタジオ・アルバム『Culture III』は、2019年中にリリースされる予定。本作『Father of 4』は、プロモーション含め、その新作に繋ぐ架け橋的役割を果たしたといえる。


Text:本家一成


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