新国立劇場 ヴェルディが7年の歳月をかけた晩年の傑作『オテロ』世界第一線の歌手陣で
新国立劇場 ヴェルディが7年の歳月をかけた晩年の傑作『オテロ』世界第一線の歌手陣で

 新国立劇場にて、ヴェルディ作曲『オテロ』が4月9日に初日を迎えた。50トンもの水を用いて舞台上に作り出したヴェネツィアの運河。中央に浮かぶ英雄オテロの居城を、陰謀と裏切り、妄想と苦悩とが取り巻き、水面で交錯する幻想的な舞台だ。

『オテロ』写真(全11枚)

 イタリア・オペラの巨匠ヴェルディは、生涯を通じシェイクスピアに多大な影響を受けており、それは『マクベス』『ファルスタッフ』そして『オテロ』というオペラに結実した。晩年の傑作『オテロ』では、従来のオペラの形式であるアリアとレシタティーヴォの区別から抜けだし、音楽と演技が一体となった「劇」を形作っている。

 今回のプロダクションでは、舞台はキプロス島から水の都ヴェネツィアへ。雷鳴と共に幕があけ、ヴェルディの重厚な合唱が、圧倒的な厚みをもって迫ってくる。揺れる水面の中央にはオテロの居城、それを取り巻く広場、客席と舞台の間をつなぐ花道がオーケストラピットの上に作られるなど工夫の凝らされた一場で、悲劇の物語は進んでいく。

 タイトルロールである難役オテロを歌うのは、新国立劇場の昨シーズン『アンドレア・シェニエ』タイトルロールに出演し絶賛を博したヴェントレ。勇猛果敢な英雄が謀略にさらされ遂には破滅に至る緊迫感をドラマティックな歌声で聞かせる。またヴェルディが作曲中のタイトルとしていた、悪の代名詞「イアーゴ」役には、ブルガリア出身のヴェルディ・バリトン、ストヤノフが登場。陰謀を巡らす所業に関わらず、クールな立ち居振る舞いと上品で甘いその歌声は、メフィストフェレスを起こさせる。世界第一線のヴェルディ歌手達による新国立劇場『オテロ』は、4月22日までの公演となっている。

◎公演概要
新国立劇場 2016/2017シーズン
ジュゼッペ・ヴェルディ作曲 オペラ「オテロ」
全4幕〈イタリア語上演/字幕付〉
2017年4月9日~4月22日 全5公演

撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場