木村カエラ「これからも この先も 私らしくありたい!」自由を取り戻したポップスターの史上最も突き抜けたツアー
木村カエラ「これからも この先も 私らしくありたい!」自由を取り戻したポップスターの史上最も突き抜けたツアー

 自由を取り戻したニューアルバム『PUNKY』をリリースし、各所から絶賛の声を浴びている木村カエラ。今作を携えた全国ツアー【KAELA presents PUNKY TOUR 2016-2017 「STUDS TOUR supported by クラシエ naive」】が11月17日に千秋楽を迎えた。

木村カエラ キュートなライブ写真一覧

<「とりあえず一人で戦ってみよう」みたいな。私はこのまま前に進めない>

 同ツアー開催前に行われたインタビュー(http://bit.ly/2f9GtMt)では、「このアルバム『PUNKY』を出すまで、ここ数年の私って結構ふわふわした状態だったぽくって(笑)。「一体、自分が本当は何をしたいのか?」っていうところがおそらく分からなくなってきちゃってて。何でもやればやるほど人の声に耳を傾けたくなるのは普通のことで、でも人の声に耳を傾けつつも自分のやりたいことは決まってるから、そのあいだで中心を捉えられないまま彷徨ってた」と苦悩の日々について心情吐露し、さらには「「とりあえず一人で戦ってみよう」みたいな。じゃないと、私はこのまま前に進めないと思ったんですよね。だから元々のバンドメンバーも、デビュー当時からずっと一緒にやってたんですけど、彼らには「私はみんながいると甘えちゃうから、一回離れる」って説明して、自分が「ここまでいけたら良い」っていう姿になるまでみんなとはやらないって決めたんです。私が変に迷ってしまっていたから、あそこで自分に覚悟を決める必要があったんですよね。でもそのおかけでようやく戻ってきました。だから今実はすごくスッキリしてて!」と長いトンネルから抜け出したことを報告してくれたカエラ。

<2016年秋現在の木村カエラ「自由を取り戻したアーティスト、みたいな?」>

 そして「2016年秋現在、木村カエラはどんなアーティストになっているなと自身では感じていますか?」という問いに「自由を取り戻したアーティスト、みたいな?」と答えた彼女は、今回のツアーでまさしくその発言通りのライブを全国各所で展開。會田茂一(g)、佐藤征史(b,cho)、柏倉隆史(dr)、ヒイズミマサユ機(key)といったカエラいわく「同じ星の人が集まった。みんなそれぞれ凄くて、切磋琢磨する感じもあるし、だからと言ってみんな偉そうにしている訳でもないし、同じ星の人たちだから空気感で伝わっていくし、すごく居心地が良い。でも遠慮せずに目立とうと出来るというか、みんな凄い人たちなのに「負けずに目立っちゃおう」ってなれる」というバンドメンバーと共に、自由で新しい木村カエラを次々と我々に叩きつけてくれた。

 ツアー初日、10月18日の赤坂BLITZ公演は、AxSxE作曲の「SHOW TIME」で幕開け。超満員のオーディエンスが繰り出すハンドクラップに「上手ねぇ~!」とのっけからゴキゲンな様子で、続くH ZETT M作曲の「僕たちのうた」ではカエラ流青春パンクをエモーショナルにお届け! 「光る 新しい日々へ! 行こう 新しい日々へ!」と自由を取り戻したアーティストに相応しいフレーズたちで我々を鼓舞しまくる。そして「みんなの声をちょうだい! もっと! もっと!」これまでも幾度となく狂乱的なハッピーグルーヴを生み出してきた「STARs」を畳み掛ければ、誰もが笑顔でオイオイコールを響かせながら大はしゃぎ。この時点で今宵のライブは大成功の様相を呈していたが、長いトンネルから抜け出したばかりのカエラが生み出す開放感は天井知らず。曲を追うごとにすべての音と言葉が凄まじい爆発力を誇っていき、最終的には彼女をよく知る者でも驚くほどの世界を創造してみせる。

<「私がPUNKYの世界へ連れてってあげるから!」生きる力を注ぐ姿勢>

 「皆さん、KAELA presents PUNKY STUDS TOURへようこそぉー!!! 記念すべき初日です。ていうか、みんなさ、フラゲしたの?(この日はアルバム『PUNKY』発売日前日)意外としてない? でもさ、音楽は乗ったもん勝ちだから。しかもPUNKYだから! とにかくノリは良いから!(でもアルバムは)とにかく買って(笑)。めっちゃ良いから、アルバム! まぁこれからここで聴いたら分かると思うんだけど! 私がPUNKYの世界へ連れてってあげるから!」と自信満々に煽りながら、その後も聴き手をどこまでも自由にしてくれる、地団駄を踏んでくよくよしている気持ちをことごとく吹き飛ばしてくれるPUNKYな音楽、アティチュードを提示し続けていく。それは「EGG」や「向日葵」のような穏やかなバラードでも変わらず。何もかもうまくいかなくても、苦しくて涙が溢れてしまっても、いつかは羽ばたける。それまで私が側にいるよと、あなたを見つめているよと、絶対的に生きる力を注ぐ姿勢は崩さない。

<世界のカエラ?「海外でライブもしたい。その野望はめっちゃあります!」>

 ちなみに、カエラは前述のインタビューで「いずれ海外でライブもしたい。その野望はめっちゃあります! 最近、その気持ちが強くなってきた」「ロンドンだけじゃなくてアジアにも行きたいし、どんどん行きたいところが増えてきてる」と語っていたのだが、今回のツアーでは「SWINGING LONDON」や「OH PRETTY WOMAN」(ロイ・オービソンのカバー)といった海外に目を向けてるとも捉えられるナンバーもセットリストに組み込んでおり、そのダイナミックかつポップな音楽とパフォーマンス、そして木村カエラのビジュアルやキャラクターを目の前で体感していると、これほど規格外な存在の評価が日本国内だけで留まっているのはたしかにもったいない。「海外でも人気者になれるんじゃないかと?」という問いに「うん、そう(笑)! なんかイケるんじゃないかな? と思ってるんですよ」と子供のように無邪気な表情で話していた姿も思い出し、ぜひともロンドンへもアジアへもこの存在と音楽を直接届けに行ってほしいと心底思った。

<カエラ=ピコ太郎? まさかの衣装被りに「買ってるときに言ってよ!」>

 また、PUNKYの世界観に合わせて黄色と黒のトラ柄衣装に身を包んでいたカエラだったが、得意気に「PUNKYだろ?」とアピールしていると客席から「大阪のおばちゃんみたい!」との声が。すると、その声の主を探し出し「あぁ! よく飛ぶ人だ! よく見る、その顔! よくコロコロ転がってくる人でしょ? もう1回言い直して! 私は何に見える?」と個人攻撃(笑)。しかし「大阪のおばちゃんみたい」ともう一度言われ「くそー!」と悔しがり、さらにそこへ「PPAP(ペン・パイナッポー・アッポー・ペン)!」という声も飛び出し、「あ、そうだ。気付かなかった! ピコ太郎?」と大慌て。ステージ裏に向かって「買ってるときに言ってよ! 言ってよ~!」と叫び出し、会場は爆笑の渦に包まれた。

<史上最も突き抜けたライブ「これからも この先も 私らしくありたい」>

 そんな想定外な一幕もあった同公演だが、この日最大のハイライトは間違いなく終盤の畳み掛け。特に「みんな踊れる?」から始まった「Yellow」以降の展開は、数あるカエラの衝撃的&伝説的ライブと比較しても「圧巻」と言える内容だった。デビュー当初から自身を支えてくれたバンドと離れ「バンドが変わったときは泣きべそでした。応援してくれる人たちも戸惑っているし、その声は私のところまで届いてたし、もうどうしたらいいのか分かんなかったんだけど、でもきっとここで進まないと私はそのまま終わっちゃうから「聞かない!聞かない!」って必死に聞かないようにして、ここはグッと我慢するしかないから「頑張れ、頑張れ、カエラちゃん!」って自分に言い聞かせてる感じでした」と語っていた彼女だが、その当時の苦悩はどこへやら。新バンドと一丸となってすべての楽曲を新たなキラーチューンへと昇華していき、日本を代表するPUNKYなポップスターとして激しく歌い踊りながら、会場中の人々の心も体も丸々自由にさせていく。

 そこへ畳み掛けられる「TODAY IS A NEW DAY」。その歌詞もサウンドも声もすべてが木村カエラの生き様そのもの、再び自由を取り戻すまでのドキュメンタリーへ深化しており、傷ついても、なじられても、落ち込んでも、苦しんでも、虚しくても、不安ばかりでも、そのすべてを起爆剤にして「始まる今日は TODAY IS A NEW DAY 昨日まで悲しくたって 新しい今日だ TODAY IS A NEW DAY!」と痛快に歌い飛ばしていく姿は、そこから感じ取れるエモーションと熱量は我々を大いに涙させた。そして、本編最後、想いが溢れ返ってしまって涙も笑いも止まらないみんなのもとへ、ヒイズミマサユ機の優しい鍵盤の音色と共にお届けされたナンバーは、今のカエラの、アルバム『PUNKY』の象徴的な1曲である「BOX」。同じ星の人たちと同じ方向を向いて全身全霊で解き放つ「こんな日も あんな日も 私らしくありたい 思い切り笑えるってきもちいいな!」「これからも この先も 私らしくありたい キラキラワクワクいつもしていたいから!」というカエラの願いが、ここにいるすべての人々の希望や渇望の歌としても響き渡っていく。

 「私も苦しいことはそこそこ経験して、楽しいことも経験してきてるから、その両極端、端から端までの距離がどれだけ凄いかも知ってる。大変な距離なの。でも、自分の状態次第でどこにでも行ける、そのことをちゃんとみんなにも解ってほしいなって思う。人はある一定のところまで行くと殻に閉じ篭って、誰の声も聞こえなくなる状態になるじゃないですか。でもその声が聞こえなくなってしまった殻の中まで声が届くといいなって思ってる。そうやって「誰かの助けになればいいな」とは常に思ってます」デビュー当初から彼女が諦めることなく継続してきたこと。この日の、今回のツアーにおける共鳴は、それが実を結んだひとつの形と言えた。こんなにも聴き手の気持ちごと人生に影響を与えるレベルのライブ……出来事とは滅多に出逢えない。

<早くも来年1月より「DIAMOND TOUR」スタート>

 そんな自身のキャリア史上最も突き抜けたライブを繰り広げている木村カエラは、早くも来年1月より【KAELA presents PUNKY TOUR 2016-2017 「DIAMOND TOUR」】をスタートさせる。会場の規模を大きくしてお届けする、今のカエラのPUNKYなライブ。ぜひとも体感してみてほしい。

取材&テキスト:平賀哲雄
撮影:橋本塁(SOUND SHOOTER)