フローレンス・アンド・ザ・マシーン 米国バークレイズセンターで行われたライブをレポート!
フローレンス・アンド・ザ・マシーン 米国バークレイズセンターで行われたライブをレポート!
 フローレンス・ウェルチが南ロンドンの自宅の小さな部屋で書き上げた”Lungs”が世界規模のヒットとなったのはもう7年も前のこと。彼女のパワフルでソウルフルな歌声を、世界中の人々の心を魅了し続け、初めて出演したグラストンベリーフェスでいつかメインステージで歌いたいという夢をわずか8年で叶えてしまったサクセスストーリーは現代のシンデレラのようだが、彼女のアーティストのとしての才能はライティングセンス、圧倒的な歌唱力、セルフプロデュース能力、そして絶対的なカリスマ性など全てにおいて超越した存在である。今回はフローレンス・アンド・ザ・マシーンの6月にブルックリンのバークレイズセンターで行われたライブをレポートする。

 ステージの照明が落ち観客が総立ちでフローレンスの登場を待ち構える中、ステージからではなくフォトピットから登場。手にした花束をファンに1輪ずつプレゼントしステージに上がるというサプライズでショウはスタート。この日の衣装は、Gucciが彼女の為にデザインしたオーガンジーのパープルのドレス。彼女がクルクル回りながらステージを駆け回ると、それに伴いドレスのフリルも舞う。その様子は女神のダンスを見ている気分になる。

 「What the Water Gave Me」からショーがスタート。オーディエンスの割れんばかりの歓声と大合唱が響き渡る。「Rabbit Heart (Raise it Up)」では、Raise it up! raise it up!という掛け声とともい会場全体がジャンプする中、フローレンスはステージを降りて観客を走り抜け2階席アリーナへの階段を一気に駆け上り、アリーナのオーディエンスの中で「This is the gift!(これがあなたたちへの贈り物よ)」と熱唱。その瞬間、オーディエンスのウェイブの中で歌い上げるフローレンスの姿は、民衆を導く自由の女神ジャンヌ・ダルクのようだ。そして美しいハープの音色に導かれてステージへと戻り、満員となった会場を目にした彼女は「私のNYでの最初のショウはバワリー・ボウルルーム(マンハッタンのダウンタウンにある600人規模の老舗ヴェニュー)だったんだけど、実を言うと酔っ払っていてあまり覚えていないの。この曲のようにね」とお酒と二日酔いの鎮痛剤で電話してこない男性を忘れようとする「Delilah」を披露した。

 ショウの後半にさしかかるところで「Mother」を歌い終えた後、レインボーのフラッグをかざしオーランドのクラブでの銃乱射事件かざしについて触れた。そして「Spectrum」の演奏が始まる。『We were clear. with no colors on our skin (私たちは肌の色もなく透明だった) We are shining, And we’ll never be afraid again (私たちは輝いている、もう二度と恐れることはないでしょう )』と彼女の歌詞にあるように彼女は力強く歌い、『Love is Love!』と叫び拳をあげる。そして会場にいるすべての人が差別や偏見に対し恐れることなく立ち向かおうと彼女と一緒に「Say My Name」と叫び拳を空高く築き上げた。

 「Dog Days Are Over」では彼女はオーディエンスに「みんなで愛し合わないと。隣にいる人とハグしなきゃ。愛はすぐ隣りにあるから互いに愛してるって伝えて!そして顔に触れてキスして!」と伝え、そこにいた誰もが抱き合い微笑み合う。そこには、今世界で起きている紛争、貧困、差別、格差などがない平和な世界になるように祈る光景でもあった。

 フローレンスと11人のバンドメンバーによってニューアルバム『How Big, How Blue, How Beautiful』の内なる自己反省の魂の叫びとともに、始終鳥肌が立ち、震えるほどエキサイトし、笑顔で歌い踊る1時間30分のステージだった。

 フローレンスのステージを観た人は多くの人は、(世の中や他人のために)自分に何ができるかを思うだろう。そして、日常が愛で溢れていて充実している人はもっと満たされた気分になり、コンプレックスや偏見や差別によって困難を抱え不安や悲しみを抱えている人は立ち向かう勇気を与えられた。それが彼女がアーティストとして与えたれた使命であると悟っているように、彼女の意思は詩とパフォーマンスに
反映し、観る者に感銘を与えるのだろう。

PHOTO&TEXT: ERINA UEMURA

◎セットリスト
1. What the Water Gave Me
2. Ship to Wreck
3. Rabbit Heart (Raise it Up)
4. Shake It Out
5. Delilah
6. Sweet Nothing (Calvin Harris feat. Florence Welch song)
7. How Big, How Blue, How Beautiful
8. Cosmic Love
9. Various Storme & Saints
10. Queen of Peace
11. Mother
12. Spectrum
13. You’Ve Got the Love (The Source cover)
14. Dog Days Are Over Encore
15. What Kind of Man
16. Drumming Song ◎リリース情報
フローレンス・アンド・ザ・マシーン『How Big, How Blue, How Beautiful』
iTunes / mora /mora(ハイレゾ) / e-onkyoハイレゾ / レコチョクにて配信中 ◎フローレンス・アンド・ザ・マシーン オフィシャルサイト
http://www.universal-music.co.jp/florence-and-the-machine/