かわかみ・みえこ/1976年、大阪府生まれ。『乳と卵』で芥川賞、『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞および紫式部文学賞、『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。毎日出版文化賞を受賞した『夏物語』は世界40カ国以上で刊行が予定されている(photo 編集部・戸嶋日菜乃)
『春のこわいもの』 (1760円〈税込み〉/新潮社) 2020年3月(と作中では明記はされていないが)の東京を舞台に、感染症大流行前夜を描く6篇を収録した短編集。ギャラ飲み志願の女性、ベッドで人生を回顧する老女、深夜の学校へ忍び込む高校生、親友を秘かに裏切りつづけた女性作家……など、6人の男女が体験する甘美な地獄巡り。コロナ禍の息苦しさのみならず、〈わたしたちはいつだって「災厄の前日」を生きている〉という筆者の思想を色濃く反映した最新刊 (photo 編集部・戸嶋日菜乃)