沢木氏の起業への志は、学生時代の就職活動までさかのぼる。「就職して社会人になるわけですが、社会人とは、社会に何らかの形で貢献できる人材のことです。私は起業を通じて、いつか多くの人たちに貢献する仕組みを作りたいと考えました」
新卒では企業のフランチャイズを支援するコンサルティング会社に就職したが、これも将来の起業を視野に入れた就職先だった。「世界に広まっているフランチャイズという事業形態について学んでおくことが、きっと役に立つ」と考えたからだった。その後沢木氏はソーシャルゲームを企画運営する会社に転職するが、これも起業にはITやウェブの知識が必要不可欠だという思いからの行動だった。
コンサルティング会社では新規事業部門に配属され、中高生向けのEラーニングサービスを開発、販売する仕事を担当した。「労働時間が月400時間を超えるようなハードな職場でした」(沢木氏)。激務のあまり体を壊した沢木氏。だがこの経験を通じて、「社会に貢献できる仕組みづくり」の対象領域がより明確になった。
「あまりに仕事が忙しく、食事がおろそかになったことが、私が体調を崩したきっかけでした」と沢木氏。また育児や介護との両立が難しくなり、やむなくやりたい仕事をあきらめてしまう人がいることも知った。こうした経験から働く人の食に関する負担を減らし、健康づくりに貢献できるような事業を起こしたいと思うようになったという。
働く人の食に貢献するビジネスの起業へ、一つの出会いがそのきっかけとなった。2012年、沢木氏はEラーニング関連のベンチャーで働いており、福井県によく出張していた。「最初のコンサルティング会社の同僚が、地元にコンビニを展開する会社に婿入りしていた。その同僚と久々に会いました」。その会社ではコンビニ向け総菜を自社で作っており、風味を損なわずに1カ月保存できるパッケージ技術を持っていた。沢木氏はこの技術を活用すれば、自分の思いを実現するビジネスを始められると考え、同年12月、おかんの前身となる会社を設立した。