安倍政権は森友・加計スキャンダルに苦しんでいる。この知事選に勝てば、来年の統一地方選や参院選を控え、自民党内では、「安倍政権では選挙を戦えない」と、安倍降ろしが始まる。これが安倍政権打倒の第一歩だ、と、一瞬、野党の夢は広がった。

 しかし、野党はこの“恵まれた”新潟ですら、勝てなかった。しかも、ショックなことに、浮動票が多いはずの新潟市内でもかなりの票差をつけられてしまったのだ。これでは勝てるはずがない。

 そこにはいくつか理由があるだろう。野党側が嘆くのが、「原発再稼働が争点にならなかった」ということだ。与党の花角候補が、徹底して「柏崎刈羽原発再稼働に慎重」という姿勢をアピールしたため、池田候補との違いが見えなくなったと言うのだ。しかし、果たしてそうだろうか。実は池田候補は、最初から「再稼働させない」と明言していない。米山前知事が始めた検証結果を待つ姿勢を示しただけだ。ニュアンスとしては脱原発だが、「絶対に動かさない」と言えなかったので、新聞などでは「慎重」という言葉で花角候補と同じように扱われてしまった。もし、「絶対に動かさない」と言っていれば、花角氏との差別化は可能だったはずだ。では、どうしてそう言えなかったのかと言えば、結局、連合などに気を使ったということなのだろう。

 花角候補は、当選するや否や、いかにも再稼働を否定しないととれる発言をして、野党側から、「やっぱり、嘘つきだった」と批判されているが、こうした「嘘」で票を集めるのは、鹿児島の三反園訓知事のときも同じだった。嘘だと暴くより差別化された公約を掲げられなかったことが敗因の一つだと素直に反省すべきだが、それを言うと、共闘態勢にひびが入るので、そうしたことを公に言う野党議員も市民連合幹部もいない。

■野党が直面する経済政策に関するジレンマ

 私は、池田候補を応援するために新潟駅前で演説をしたが、そこで感じたことがある。

 それは敵失に乗じた安倍批判だけでは、野党は自公に勝てないということだ。池田陣営の応援弁士のほとんどが森友・加計問題への自公の対応を面白おかしく批判した。それはそれで、的を射ていて、正しい批判ではあった。ただ、その演説は、太鼓をたたいて気勢を上げる「市民連合」には内輪受けしても、その様子を遠巻きに眺める一般市民には響かなかったようだ。

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