「僕がファンサービスを大切にするのは、僕自身が子どものとき、ひとりのプロ野球選手からサインをもらったことが、いい思い出になっているからなんです。そんな幼い日の出来事があったからこそ、僕はプロ野球選手にまでなれたと思っているんですよ」

 山崎にプロ野球選手を志すきっかけを与えてくれた憧れの人物とは、かつて日本ハムをはじめ、横浜、西武で活躍した森本稀哲氏だ。

 山崎と森本氏は地元が共に東京都荒川区であり、親同士が知り合いで仲が良かったという。山崎はひと回り年上の森本氏の影響もあって小学校2年生のときに野球を始めた。その後、帝京高校へ進学したのも同校のOBである森本氏のプレーを甲子園で見たからだ。

 森本氏はご存じのようにファンへのサービス精神が非常に旺盛で人気を博した選手だった。

「やっぱりプロ野球選手にもらったサインってすごく嬉しいんですよね。もらった子にとっては、かけがえのない大きな宝物になる。だからいいかげんな気持ちで接しちゃいけないと思うんです。自分としては、あのときにサインをもらった気持ちを忘れたくないという思いもあって、できるだけサインをすることにしています。忙しいときであっても初心を思い出すために」

 サインを書いて渡すとき、子どもの目線に合わせて顔を見てニコリと微笑む。また直接サインはできなくとも、スタジアムやテレビの前で見ている子どもたちの憧れの存在でいたいと強く思っている。だからこそ今日も多くのファンが詰めかけるスタジアムで、“ヤスアキジャンプ”と万雷の拍手のなか、クローザーという難しい務めを果たしている。

 今季の山崎は、4月10日に100セーブを達成。日本人クローザーとして4年目での大台到達は史上初だ。また、ここまで22試合に登板して防御率1.23、13セーブを挙げている(データは6月15日現在)。昨年まで時折見せていた調子の大きな波はなく、ハマの守護神として安定した登板を続けている。

 現在オールスターゲームの投票中だが、山崎はセ・リーグのクローザー部門でトップを快走している。まだ確定はしていないが、高い確率でオールスターに選出されることになるだろう。試合当日、他球団のファンはぜひ、普段は体感することのできない“ヤスアキジャンプ”を体験し、プロ野球ならではの高揚感や醍醐味を楽しんでもらいたいものである。(文・石塚隆)

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