「怒った?それで普通でしょ!当てられたら痛いよ。(死球を)やってくるところ(チーム)は一緒だし」

 さすがのイチローも精神的にこたえたようで、以来、13打席安打が途絶え、三振3つを記録。「故障には勝てない」の声も聞かれはじめた。

 だが、同20日の日本ハム戦(グリーンスタジアム神戸)で14打席ぶりの安打となる満塁弾を放つと、次の打席でも2ランと当たりを取り戻し、見事復活を遂げた。

 余談だが、この事件以後、仰木彬監督はイチローの死球に対してナーバスになり、西川を忌避するようになる。翌98年3月25日のオープン戦の7回にイチローの打席で西川がマウンドに上がると、「開幕前に当てられたら大変」という理由で、代打・福留宏紀に交代。開幕後の同年5月7日の近鉄戦(大阪ドーム)でも、7対1とリードの9回2死一塁のイチローの打席で西川がリリーフすると、代打・小川博文が送られている。

 プロ在籍11年で通算4勝5敗と目立った成績を残していない西川だが、“イチローの天敵”として名を残すことになろうとは、これも不思議な因縁である。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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