さらに、女性漫画家「伊津原しま」のプロデュースを決めた。「作業仲間でありながら、ライバルとしてけん制し合う存在がいることで新たなる創造性を高めていくことにした」と話すが、見た目だけでなく、作風も伊勢田さんとしか思えない……。「少女漫画的内容は女性が描いている方が、夢があるので。彼女は新たな助っ人です」と本人は力説する。
伊津原さんは、スマートフォンも持たない伊勢田さんとは違い、ウェブコミック投稿サイト「マンガボックスインディーズ」に次々と作品を投稿。手描きしたものを1枚1枚カメラで撮影、編集したものをUSBメモリに入れ、漫画喫茶などから送る。創作意欲がありあまっているせいか、一時は連続で投稿し過ぎて、おわび文を掲載する事態になったそうだ。
読者から「読むに耐えない」「ダサっ」などと手厳しいコメントが書き込まれることもあるが、プロデュースする伊勢田さんは「気にならない」。「ディスりが多くても、それだけ読んでいただけているということ。むしろ感謝したい」。それどころか、「直接読者の声を聞けるのがいい。いい加減に描いたものがたくさん読まれるなど、何が当たるか分からないところも面白い」と興味津々だ。
また、伊津原さんは、自作の漫画を原作にしたアニメDVDや、自ら歌って踊る主題歌CDをアマゾンで販売。売れなくて返品されてしまうこともあるが、購入してくれる人もいるという。念願の単行本「浅瀬でランデブー」(ミヤオビパブリッシング)も刊行した。
さらに、漫画に登場する少女キャラのLINEスタンプも制作。女の子の顔をしたイカが仕事をこなしながら「仕事するめー」と言ったり、ナスをしょった看護師の女性が「お大事になすって」とウィンクしたり。しょっぱいギャグが満載だが、何とも言えない味がある。
果たして独立してやっていけるのか……。当の本人は「まだまだ作品のクオリティーには満足していない。アイデアは、タラレバという形でも100以上はある」とどこ吹く風だ。さらには「ちょっとでも社会貢献できるようなものを作りたい」と熱く語る。独立して壁にぶち当たっても、創作への情熱は揺るがないどころか、ますます深まっているようだ。
伊勢田さんがプロデュースに力を入れる伊津原さんは、18年5月19日、神戸市の元町映画館で行われる自作の少女アニメ映画「瞳の奥のレジェンド」の上映会で、トークやライブを披露するという。伊勢田さんは「伊津原は引っ込み思案なところがあるので、積極的に自分をアピールしていってほしい」と期待を寄せる。果たしてどんな伊勢田&伊津原ワールドが見られるのか、不安と期待が入り交じる。(ライター・南文枝)