まずはケガのリスク。これも憶えていない人が多いのですが、大谷は昨年、投手としてほとんど活躍していません(注:17年の登板数は5回で、3勝2敗)。
その原因は、前年の日本シリーズで打者として出場した時にケガをした右足首。1年のほとんどを投手として登板できなかった。
また、これも1年間のシーズンをやり抜いたプロの選手にしかわからないことですが、体が疲れたからといって、休んでいたら回復するわけではない。疲れが出たときこそ、逆にトレーニングをして鍛えることも必要。それを、打者と投手の2つの調整をやるのは、かなり難しい。ケガのリスクも高まります。
実際、MVPを取った16年も、規定投球回も規定打席も到達していないんです。日本ハムの時にできていないのに、メジャーに行ったら実現できますか? 「できる」と予測するのは、難しいのではないでしょうか。メジャーはよほどレベルが低いということになってしまう。
──エンゼルスでは二刀流で溶け込んでいるように思えますが。
今はよくても、成績が悪くなった時にDHで出場するとどうなるのか。当然、チーム内でDHで出場したい選手から不満が出る。また、中4日登板が多いメジャーの先発投手陣の中で、中6日をいつまで認めてくれるのか。成績が悪くなった時に、チームから不満の声は必ず出てきます。
──やはり、二刀流をやめて、投手か打者のどちらかに専念すべきなのでしょうか。
私たちは、成績はシーズンのトータルで見て評価します。でも、ファンはその一瞬一瞬を喜ぶから、どうしても私たちと選手を評価する時の価値観が違う。それは両者の埋めようのない差なんです。
それでもファンが求めるなら、もうしょうがないんじゃないでしょうか。ここまで来たら、本人が好きなようにやればいいと思っています。
ただ、誤解をしてほしくないのは、私は、大谷の悪口を言っているわけではないんです。彼のため、そして日本球界のために「本当のこと」を言っているんです。
私としては、これほどの才能のある選手なのに、ファンやメディア、球団から見世物にされてしまって、「もったいないなあ」と思っているだけなんですけどね。
(AERA dot.編集部・西岡千史)