中日時代の彦野利勝=98年撮影 (c)朝日新聞社
中日時代の彦野利勝=98年撮影 (c)朝日新聞社
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 2018年シーズンが開幕して間もないプロ野球だが、懐かしいプロ野球のニュースも求める方も少なくない。こうした要望にお応えすべく、「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、80~90年代の“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「思いがけない代役編」だ。

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 サヨナラ弾が飛び出した直後、ダイヤモンドを1周したのは、なんと別人だった!こんなビックリ仰天のハプニングが起きたのは、1991年6月18日の大洋vs中日(ナゴヤ)。

 6対6で迎えた延長10回裏、2死無走者で打席に立った中日の6番打者・彦野利勝は、盛田幸妃の内角スライダーをフルスイング。低い弾道の打球は、ライナーで左翼スタンドに突き刺さった。

 劇的なサヨナラアーチに中日ナインは「やったあ!」と歓声を上げて大喜び。殊勲のヒーロー・彦野も一塁ベース手前で歓喜のジャンプパフォーマンスを披露した。

 ところが、一塁ベースを回った直後、彦野は顔を歪め、右足を押さえてうずくまってしまった。ジャンプしたときに右膝のじん帯を痛めてしまったのだ。

「一塁の前で右膝がガクッときた。塁は回ったけど……。ゆっくり走ればよかった」(彦野)

 これではもう走れない。次打者・大豊泰昭の背中におぶさりながら、ベンチに戻ってくる羽目になった。

「幸司、行ってこい!」。星野仙一監督に命じられ、急きょ山口幸司が代走としてダイヤモンドを1周。サヨナラのホームを踏んだ。

 ホームランを打った打者に代走が出るのは、69年5月18日のジムタイル(近鉄)以来2例目の珍事だが、サヨナラホームランの代走はもちろん史上初だ。

 彦野のけがは当初ねん挫と診断されたが、その後の検査で右膝じん帯断裂の重傷と判明し、不運にもシーズンを棒に振ってしまった。

 ホームランを打っても、喜び過ぎるのは考えものだ。

 プロ2年目の野茂英雄(近鉄)が代打で登場するハプニングが起きたのが、1991年7月24日のオールスター第2戦(広島)。

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代打野茂!