中村雅俊 (c)朝日新聞社
中村雅俊 (c)朝日新聞社

 昨年4月3日、「西郷どん」に続く2019年の58作目大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」の詳細が明らかにされた。

 発表によれば、日本が初めて夏季オリンピックに参加した1912(明治45)年のストックホルム大会から1964(昭和39)年の東京大会開催までの52年間の日本近現代史を、マラソンの金栗四三(中村勘九郎)、水泳の田畑政治(阿部サダヲ)の足跡を辿る物語になるという。

 宮藤官九郎の大河初参戦にしてオリジナル脚本。さすがクドカンと思わせるのは、金栗・田畑のエピソードと並行して古今亭志ん生(青年時代を森山未来、真打以降をビートたけし)が架空の落語「オリムピック噺」を語り、随所に志ん生が見た明治から昭和までの日本の変遷を挿入する、という大胆な構想だ。
明治以降を舞台とした大河といえば「山河燃ゆ」「春の波涛」「いのち」の「近現代史三部作」が思い浮かぶが、「いだてん」はそのDNAを生かしつつ、日本近現代史を鳥瞰する大河になるかもしれない、という予感をいだかせる。

「近現代史三部作」の二作目にあたる 「春の波涛」は明治時代が舞台だった。 “文明開化の華”と謳われた鹿鳴館が完成し、連日連夜催されていた豪華な舞踏会からドラマが始まる。

 主役はオッペケペー節で知られた自由民権派の演劇人・川上音二郎(中村雅俊)と日本の女優第一号になった芸者の貞奴(松坂慶子)夫妻。ふたりに絡む実業家・福澤桃介(風間杜夫)とその妻で福沢諭吉の次女・房子(檀ふみ)の4人の、近代化にひた走る時代の奔流に抗いながら必死に生きる姿が描かれた。音二郎を演じた中村雅俊さんは当時のことを以下のように回想している。

 「川上音二郎のことは、“オッペケペー節”や自由民権運動を行ってきた人だというくらいの知識はありましたが、奥さんが貞奴だったとは知りませんでした。実在の人物を演じる場合、いまの自分から遠い人ほど芝居に入りやすかったのですが音二郎は現代と距離が近い人物でしたから難しかったです。ただ、彼は“川上座”という劇団を主宰していたので、役者をやっている自分と共通する部分もあり、そう考えると次第に演じることがすごく楽しみになってきました」

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植草信和

植草信和

植草信和(うえくさ・のぶかず)/1949年、千葉県市川市生まれ。キネマ旬報社に入社し、1991年に同誌編集長。退社後2006年、映画製作・配給会社「太秦株式会社」設立。現在は非常勤顧問。

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