そんな難題が待ち受けるのに、安倍総理はわざわざこの時期に首脳会談を行ってくれとトランプ大統領に泣きついた。その理由は、北朝鮮問題で、日本が全く関与できないまま、南北首脳会談が発表され、さらに米朝首脳会談にトランプ大統領が応じるなど、「蚊帳の外の安倍総理」という見方が国民の間に広がる事態になったからだ。

 とりわけ、「外交に強い安倍」を支持する右翼の岩盤支持層にアピールするためには、トランプに見捨てられたという懸念が広がるのは何としても避けたかった。そうした安倍総理の心理は容易に推測できる。

 しかし、こちらからどうしても会ってくれと頼んだら、頼んだ方の立場が弱くなる。おそらく安倍総理は、日米首脳会談終了後に、「日米は100%ともにあることが確認できた」と胸を張るだろう。また、鉄鋼・アルミの輸入規制では、例外措置を認めてもらえるかもしれない。元々、日本の鉄鋼製品などは、他国のものと違い、性能品質面で差別化されていて、それがないと米国の産業界が困ると言われていたもので、量的にも大したことはない。しかし、その程度の「成果」でも安倍政権は大はしゃぎしながら、「安倍総理とトランプ大統領の固い絆の証し」だとアピールするはずだ。それが安倍総理のイメージ外交だ。

 しかし、仮にそういうことが起きたとしたら、その裏では、発表がいつになるかは別にして、FTA交渉開始に合意するなど、日本側が大きな譲歩を強いられたと見た方がよい。結局、この会談は、自分のメンツと支持率のために、国民の利益を犠牲にするというやってはいけない外交の典型となる可能性が高い。

 もう一つの外交課題としては、日ロ首脳会談が5月26日に開催される予定だ。ここで北方領土返還交渉を大きく進めることができれば、森友幕引きには大きな効果が期待できる。今回この問題には深入りしないが、米ロの対立が深まる中で、ロシア側が、返還の話をしてくれたとしても、歯舞・色丹返還の場合に、そこに米軍基地が置かれないことの保証を最低限の要求として出してくる可能性が高い。その場合は、米国との関係で、日本側が譲歩するのが難しくなる。かくして、表面的に日ロ友好が進んでいるかのようなイメージ作りだけで終わる可能性が高い。その際、北方領土について、プーチン大統領に望みをつなぐ発言をしてもらうために、共同経済活動などで大盤振る舞いを強いられるのは確実だ。ここでも、安倍内閣の延命のために国民の税金の無駄遣いが起きるのだ。

 森友事件から国民の目をそらすためには、日米、日露の首脳会談の成果では力不足だとすれば、安倍総理が期待をかけたくなるのが北朝鮮問題での局面打開だ。昨年末までは、ことあるごとに北朝鮮の脅威を強調して、今は国を挙げて国難に当たるべきと主張してきた安倍政権だが、「残念ながら」、年明け以降は、北朝鮮と韓国に主導権を握られ、完全な対話モードに転換してしまった。今、「森友より北朝鮮の危機」と言うだけでは、あまり国民の心に響かない。しかも、この対話モードは、5月下旬と言われる米朝首脳会談までは続く可能性が高い。

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