「他にも、『不具合があってもお前ら喜ぶだろう』という上から目線のサービスは一発で気づかれる。お金を払えば広告を外せるとか、課金したら画質が綺麗になるとか、不具合を提供しておいて、それを改善させることにお金を払うビジネスモデルは最初から最高の体験を提供しないのでもったいない。お金を稼ぐことが最良のサービス出すより優先されている。ウェブメディアも同じ。ページ数を増やして、ビューを稼ぐのは、ユーザーの体験を落とす」

 そうした消費者が求める広告にマッチするのが音声市場だという。

「音声放送の広告は、気持ちよい広告を出せる。例えば、真面目な話の後に、クスっと笑える広告だったり、好きな演者自身が好きな商品をすすめたりできる。求められる広告のヒントとして参考にしたのは、プロ野球球団。ヤクルトスワローズのファンは、ヤクルト飲料のCMを出されてもウザいと思わない。これが受け手に愛される広告です。ライブ動画もそうですが、生配信で、演者の素を感じさせてほしいというニーズを汲み取ったのが音声放送です」

 台本をつくって、人はこう思うはずだから、こう制作しようというディレクターの意図にのせられるのに嫌悪感を抱いている消費者もいるという。

 「これまでのラジオやテレビは、受診者のデータを利用せず、想像で放送する内容を作っていたので、求められる広告やコンテンツを出すことができなかった。僕らのアプリは、リスナーの反応を全て取れることに強みがある。ログインや離脱状況、ターゲットなども全てわかる。大企業の良いところと、僕らのデータを組み合わせれば、良いものをつくれる自信がある」

 音声コンテンツが世の中で当たり前になる時代は確実にやってくる。スマートスピーカーの利用者数は確実に増えてくるだろう。性能自体は「まだまだ」というが、「別になくてもいいけど、体験が違うから使いたくなる。iPhoneが出始めたときに、iPhoneいらないよね?と言っている時期だ」と緒方氏は分析する。

 スマートスピーカーが一家に一台の時代になったとき、私たちの「情報の取り入れ方」も急激に変化していきそうだ。(田中将介)