朝の通勤時やメイクの時間、夜寝る前の時間帯にテレビではなく、音声を楽しむ、“ながら聞き”が流行している。
文章や動画、音声を取り入れ情報を発信する「マルチメディア化」は、今のメディア文化の潮流だ。音楽ストリーミングサービスSpotifyは2018年、マルチメディアフォーマット「Spotlight」のリリースを発表。バズフィードなどの企業と連携し、ニュースや文化などのコンテンツを提供している。
日本でも、ネット上でラジオ音声などを楽しめる「ポッドキャスト」人気が再燃するなど、私たち一人一人の生活にも音声メディアは身近になっている。その波を後押しするのが、スマートスピーカーだ。Amazon社の「Amazon Echo」やLINE社の「Clova」、Google社の「Google Home」が登場している。
こうした動きに敏感な企業も出始めた。文化放送、毎日新聞、野村証券などがタッグを組むのは、音声放送のプラットフォームサービス「Voicy」だ。大手企業が音声コンテンツを導入する理由について、「Voicy」CEOの緒方憲太郎氏はこう語る。
「これまでのメディアは、正しく情報を届けることに重点が置かれていたが、そもそも情報を一発でわかるように届ける必要はない。聞き取れなかったら、もう一度聞いたり、調べてもらえたりすることができる時代になっている。今のメディアに必要なのは、知識ではなく、知性を届けること。つまり、情報を正しく届けることではなく、物事の考え方や、彩りや人間味を加えた、情報じゃない情報が価値になる。それを体現しているのが、音声コンテンツで、声は、『様々な産業+声』というコラボで、全ての産業に彩りを加えられる」
声を使って情報を発信するメディアとして長年愛されているのは「ラジオ」で、いまだに根強い人気はあるものの、斜陽産業とささやかれているのは周知の事実。しかし、音声の市場には、驚くほど参入できる余地があるという。