同じシアトル出身のパール・ジャムのメンバーたちのサポートもあり、ようやくその権利が遺族のもとに返されたのは、1995年のこと。以来、ヘンドリックスの創作活動のほぼすべてをエンジニアとして支えたエディ・クレイマーの手によって、現在のオーディオ環境にも合致した音質、音圧での再リリース、再編集が重ねられてきた。97年には、4枚目のスタジオ録音作品として想定されていた『ファースト・レイズ・オブ・ザ・ニュー・ライジング・サン』がようやく正式な作品としてまとめられ、2010年に発売元がソニー・レガシーに変わったあと、オリジナル3作品も、あらためてきちんとした形で発売されている。

『ボウス・サイズ・オブ・ザ・スカイ』は、2010年発表の『ヴァリーズ・オブ・ネプチューン』、13年の『ピープル、ヘル&エンジェルズ』につづく、遺稿集とでも呼ぶべきか、聴かれるべきトラックだけを集めた三部作の完結編。前2作同様、クレイマーと、妹のジェイニー・ヘンドリックス(父アルの再婚相手アヤコの娘)、アーカイヴィストでジミの活動を詳細に記録した『セッティング・ザ・レコード・ストレイト』の著者でもあるジョン・マクダーモットが制作にあたっている。

 収められているのは、1968年から70年にかけてロンドンのオリンピック・スタジオとニューヨークのレコード・プラントで残された13曲。70年元旦のライヴからバンド・オブ・ジプシーズの名でアルバムを発表しているバディ・マイルズ(ドラムス)、ビリー・コックス(ベース)とのトリオで録音したものが中心になっていて、結果的に短命に終わったバンドが進もうとしていた道を知る手がかりにもなりそうだ。オープニングに据えられたマディ・ウォーターズの名曲「マニッシュ・ボーイ」、オリジナルの「ラヴァー・マン」「ステッピング・ストーン」「パワー・オブ・ソウル」「センド・マイ・ラヴ・トゥ・リンダ」、そして、マイルズと二人だけで録音したインストゥルメンタル「ジャングル」の計6曲。いずれも「ちょっとやってみた」というレベルのものではなく、ブルースを基本に置きながらソウル、ファンク、ジャズなど意欲的に表現領域を広げようとしていた彼らがスタジオ録音作品を残さなかったことは悔やまれてならない。

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