中国政府は19日になってようやくデモを禁止したが、振り上げた拳をおろすつもりはなさそうだ。商務省の報道官は19日の定例会見で、日本製品の「不買運動」を公式容認し、北京市当局は、日本関係の書籍の出版を止めるよう出版社に通告。露骨な "報復措置"は今後も続くだろう。

 お互いに譲れない尖閣問題を先鋭化させなかったのは、78年、日中平和友好条約の批准書交換のために副首相として来日した鄧小平氏の「棚上げ論」だった。

「我々の世代の人間には知恵が足りない。(中略)次の世代の人には我々よりもっと知恵があろう」

 として尖閣の決断を先送りし、今日まで至った。しかし、元外交官で、立命館大客員教授の宮家(みやけ)邦彦氏は「中国がこれだけ尖閣に侵入している以上、今までの棚上げ論にはもう戻れない」とし、こう続ける。

「大切なのは『新しいルール』と『抑止力』です。棚上げ論に代わるルールは、海洋に関する日中協議など話し合いの中で見つけていく。そのためには早く大使を決めて、日中間で仕切り直しのシナリオをつくることが必要です。それでも中国が非軍事的に尖閣水域で実効支配に向けたチャレンジをしてくるのは間違いない。だから日本もまずは非軍事的、つまり海保を強化することで、抑止力を高めるべきです」

 また、竹島問題で、日本が国際司法裁判所(ICJ)への提訴を韓国に持ちかけたように、解決を第三者に委ねる手もある。外交評論家の岡崎久彦氏が言う。

「中国が自国の領土と主張するなら、日本は『ICJで受けて立つ』と大きく構えればいいのです。中国が提訴できないなら、漁船を尖閣の水域までよこすような姑息な真似をするなと言うべきです。現状では中国は争っても負けますから、訴えてはこないでしょう。日本が尖閣に港を造って実効支配を進め、『裁判に負けたら港も含めてすべて渡す』と、交渉で、それくらいのことを言ってもいい」

※週刊朝日 2012年10月5日号