医者になるということは、勉強を一生し続けることにコミット
医者になるということは、勉強を一生し続けることにコミット
この記事の写真をすべて見る

 少子高齢化が進む日本で、今後、医療の現場はどう変わっていくのか。AERAムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる2018』では、NHK人気医療番組「総合診療医 ドクターG」でも知られる、福井大学医学部附属病院救急科・総合診療部教授の林寛之医師に、医学部を志望する学生に向けて「これから求められる医師像」を示してもらった。

ドクターG・林寛之医師「共感力、協調力、ユーモア力なくして医者は務まらない」

*  *  *

 医療は細分化され、臓器から細胞、遺伝子、ミクロの世界まで解明され、診断法や新薬が次から次へと開発されています。山中伸弥先生の「iPS細胞」はiPhoneやiPadにも負けないすてきなネーミングで、世界を驚愕させた大発見です。これから臨床応用されていくことでしょう。

 この発見は世の中には福音ですが、医者にとってはまた勉強することが増えるわけですね。医学の世界では5~10年も経てば「ひと昔前」となり、10年前の治療が今ではエビデンス(科学的根拠)がなかったり、むしろ悪影響が出るとわかったりすることは日常茶飯事です。

「一体全体、将来何の役に立つんだよ」と思いながらいろんな科目を大学受験のために勉強するのは大変でしょう。確かにそのほとんどは医者になって直接必要のないものばかりです。ちなみに英語は医者になってからも突き抜けるために必須であり、医学生になっても継続して勉強してください。

 さて医学部に入ったら、嫌でも解剖学、病理学、組織学、生理学、薬学、症候学、各臓器の学問など気が遠くなる膨大な量(しかも分厚くて面白くない本! 枕にはいいかも?)を短期間で覚えていかなければいけません。高学年になると実習も入り、休みがほとんどない学年もあります。

 さらに、医学部卒業後は2年間、体力勝負の初期研修で寝食を忘れ、3~5年間の専門研修を経て初めて専門医になれます。専門医になるには大学入学から最短でも11年かかるわけです。専門医になった後も常に新しい情報をキャッチアップするために一生勉強し続けなければいけません。

次のページ