「公文書の書き換えが事実なら、近畿財務局の独断でできるわけはなく、本省も知っていたはず。それにしても、財務省はあちこちに痕跡を残している。交番の前で1万円札を拾って懐に入れたようなものです。こんなことが許されてはならないし、逮捕者が出て当然です」
この官僚が指摘する「痕跡」とは、紙のコピーで8日に提出された決裁文書に書き込まれていたチェック印のことだ(資料写真参照)。昨年2月に問題が発覚した後に国会議員に開示された資料にはチェック印はなかった。つまり、チェック印はその後に誰かが書き加えたものと思われる。この点も野党は財務省に問いただしたが、同省の富山氏は「今、調査している」と繰り返すだけだった。
なぜ、財務省は「調査中」を理由に事実上のゼロ回答を続けるのか。元東京地検特捜部検事の郷原信郎氏は、こう分析する。
「朝日が報じたとおり書き換えが事実だと、現在、決裁文書の原本には2つの可能性があります。一つは、国会議員に提出されたものだけ内容が書き換えられていて、原本は正しい状態にあること。これは、原本を持っている大阪地検特捜部に『原本を使用したい』と言えば、すぐに突き合わせることができます。第二の可能性は、原本そのものが書き換えられていること。この場合は、誰が、どのような目的で書き換えたのかを調査しなければなりません。いずれの可能性も、有印公文書偽造・変造などの犯罪にあたる可能性があります」
問題発覚から1週間が経過したが、沈静化の気配はない。与党内でも財務省の対応を批判する声が高まっている。
「副幹事長の小泉進次郎ら若手の間で、財務省の対応を批判する声が出ている。このまま、『調査中』という曖昧な対応で逃げ切ることは難しく、いずれ麻生太郎財務相の進退問題となる可能性もある。そうなれば、9月の総裁選に向け、政局に発展する危険性がでてきた」(与党関係者)
国会から当分、目が離せない。(横田一/AERA dot.編集部・西岡千史)