ただし、これらはあくまでハード面の未来像である。都市とは、箱ものやインフラだけで成り立っているのではない。そこに人間が集まり、さまざまな活動が行われたり、日々の生活が営まれたりする場である。
そこに集う「人」が、何を思い、どう感じるのか。人間の感性や時代の価値観まで包含して新しい都市をつくりあげていくのが「都市デザイン」であり、それが「都市計画」や「都市開発」とは異なる点である。都市デザインの第一人者、鈴木崇英氏は言う。
「都市デザインは、街を美しく快適にし、街に活気を与え、人々を幸せな気持ちにする手段です。大規模なインフラ整備による経済波及効果ばかりに注目するのではなく、東京五輪をきっかけに、都市としての魅力を高めてほしい」
ヨーロッパを訪れると、街全体がゆったりとしていて、いるだけで文化の薫りを楽しめる都市がいくつもある。効率性や利便性も大事だが、それだけでは都市に潤いがない。鈴木氏は「これからの都市は“文化とゆとり”を備えるべきだ」と考える。