ビルの屋上でのライヴというなんとも魅力的な構図は、後進のアーティストたちにさまざまな形で刺激を与えた。
個人的にもっとも強く印象に残っているのは、U2が傑作『ザ・ジョシュア・トゥリー』のオープニングに収めた「ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネーム」のミュージック・ビデオ。大規模な世界ツアー開始直前の1987年3月末、ロサンゼルスに滞在していた彼らはダウンタウン、7thストリートとメイン・ストリートの交差点に建つリカー・ショップの屋上で、グラミー映像部門賞も獲得することになるそのビデオの撮影を行なっている。厳密な意味でのライヴではないが、街の人々からの反応も撮影されていて、彼らがビートルズを意識していたことは明らか。マンハッタンのビルを船に見たて、ノラ・ジョーンズがその舵を操作しながら歌う、「チェイシング・パイレイツ」のビデオもなかなかだった。