そうした無届けホームの中には、費用は低額でも居住環境やサービス内容が劣悪など、いわゆる「貧困ビジネス」に類するものも見られる。自治体の指導・監督に従える状態にないゆえに無届けとしているわけだ。また、過去に消防法令に違反していた無届けホームで、火災で多くの入居者が亡くなる事件もあった。

 国は2017年の法改正で、劣悪なホームには届け出の有無にかかわらず、自治体が業務の制限や停止の命令を出せるようにした。しかし、低所得高齢者などの住まいの受け皿が不足する中では根絶は容易ではない。どんなに安価なホームの勧誘を受けても、管轄の自治体に届け出の有無を確認し、必ず現地見学をするなど入居は慎重を期すようにしたい。

■まとめ

 有料老人ホームの定義に該当する住まいの勧誘を受けたら、管轄する都道府県および政令指定市に届け出がおこなわれているかを確認。入居意思がないのにしつこい勧誘を受けた場合などには、最寄りの消費生活センターや消費者ホットライン(電話番号188)に相談しよう。

解説/田中 元(介護福祉ジャーナリスト)
出版社勤務を経てフリーに。介護保険制度以前から、高齢者の医療・介護にかかる現場取材を通じ、専門誌への寄稿や講演などをおこなっている。主な著書に『安心で納得できる老後の住まい・施設の選び方』(自由国民社)、『介護リーダーの問題解決マップ』(ぱる出版)など。

※週刊朝日ムック「高齢者ホーム 2018 プロに教わるやすらぎの選びかた」から