従来、人は勝ち組とされてきた「富と権力」を追い求めてきた。しかし、家入は言う。

「比較はできないけれど、従来の勝ち組・負け組、強者・弱者の定義が一気に変わる可能性がある。その中で、生きることの選択肢を増やすことが社会の包摂につながる」

 2014年、家入は「本来セーフティーネットをつくる政治側から居場所の作り方を考えてみたかった」と、東京都知事選挙に出馬した。

 Twitterを使って政策を公募し、皆の声を拾っていった。

「皆で作るなら家入じゃなくていいじゃん」という批判に家入は大きくうなずいた。「僕はただの器で、皆の意見を吸い上げるだけ。プラットフォームとして家入を使ってもらえればよかった」

 結果は、約8.9万票の5位で落選。

「『政治家としてこれからやっていきます』と発言していたこともあったが、だんだん意見を発することの虚しさに襲われていった。1つの言葉を発した瞬間に出てくる、過激に賛成または反対する人によって、社会が分断させられることが僕はとても嫌だった」

 家入自身がネットという空間に息苦しさを感じた瞬間だった。

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