そんな犬は、安産かつ多産なことでも知られています。そのため妊婦の守り神としても愛されてきました。
妊娠5か月めの戌の日には「帯祝い」を行なう風習があります。神社にお参りをしてお祓いを受けた帯を、赤ちゃんの宿ったお腹に巻くというものです。安産のおまじないであると同時に、お腹の中の赤ちゃんの位置を安定させるものでもあります。
この帯祝い、戌の日の、戌の刻(19~21時頃)に行なうという念入りなご家庭もあるのだとか。であるなら、やはり戌年に出産したいと思うもの。子育てや安産にご利益のある神社やお寺は日本全国にありますが、実際に戌年はどこも賑わうといいます。新しい命を授かるには、格好の年ともいえるのです。
また、お宮参りのときなど、赤ちゃんがはじめて世間や社会に出るときには、その額に犬の字を書く風習もあります。犬の子はすくすく元気に育つことにあやかっているのです。魔除けのおまじないでもあります。
赤ちゃんがたくましく育つようにと、犬の姿をした置物である犬張子を送ることもあります。江戸時代にさかんになりました。犬は新しい命を見守ってくれる身近な動物と考えられてきたからです。
物事の結実と、新しい出発、誕生。戌年とは、そんな1年なのです。(文・室橋裕和)
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