耳の痛いことを部下にどう伝えれば良いのか(※写真はイメージ)
耳の痛いことを部下にどう伝えれば良いのか(※写真はイメージ)
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 年上部下や今どきの若手に耳の痛いことも伝え、彼らの成長を立て直す「フィードバック」。『実践!フィードバック』著書で東京大学准教授の中原淳氏は、実際の職場でうまく機能させるために、事前準備、フィードバック実践の5ステップ、事後のフォローのポイントを示している。それぞれの段階で効果的なフレーズやNGフレーズも交えながら、順次説明していこう。

 まず「事前準備」。この段階では、できるだけ具体的に部下の問題行動を指摘できるようにするため、入念な情報収集をすることが重要だ。その際参考になるのが、「SBI情報」という考え方だ。

 SBIはS(シチュエーション、どのような状況で)、B(ビヘイビア、部下のどんな行動や振る舞いが)、I(インパクト、どんな影響をもたらしたのか)の頭文字をとったもの。例えば、「ここ半年の営業実績の件だが(シチュエーション)」、「電話でのアポイント件数が1日平均10件に達していないようだ(ビヘイビア)」、「その結果、営業実績が前年比4割下がってしまっている(インパクト)」というのが、SBI情報の一例だ。実際にフィードバックに入る前に部下を観察し、本人に話を聞き、周囲にも聞き込みすることで、できるだけ多数の具体的なSBI情報を集めておく。

 そうすれば「君って〇〇的で、△△性が足りないよね」などと抽象的なフィードバックになることが避けられ、部下が話をそらそうとしたり、自分に都合のいい抽象化をしようとしたりした際には、有力な反論材料にもなる。「SBIを制する者、フィードバックを制する」なのだ。

 事前準備ができたら、いよいよフィードバック本番となる。実践は5つのステップから成るが、最初のステップは、「信頼感の醸成」だ。フィードバックをする場には、個室を用意する。上司に厳しいことを言われている場面を、他人に見られたい人はいないからだ。「内心腹が立っていたとしても、相手の成長を願い、リスペクトする姿勢で臨むことが大切です」(中原氏)。話し合いの入り口は雑談で始め、リラックスした雰囲気を演出しよう。

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