ここは何としても残り3試合を全勝し、ワースト記録更新だけは免れたいところだ。そんなナインの執念が実を結び、同30日の中日戦(神宮)は、4点リードをはね返し、7対5と打ち勝った。

 ところが、この試合で同点3ランを放った主砲のバレンティンが審判への侮辱行為でシーズン3度目の退場処分を受け、ペナルティで1試合出場停止になってしまった。翌日の試合を主砲抜きで戦わなければいけないのは痛かった。

 それをものともせず、翌10月1日の中日戦、ヤクルトは2回に3点を先制。先発の高卒ルーキー・梅野雄吾も5回を2失点と試合を作った。しかし、それでも勝利の女神は微笑まなかった。7回2死から追いつかれ、9回にルーキが代打・松井佑介に左越え3ランを献上。ついにシーズン95敗のワースト記録となった。

 すでに退任が決まっていた真中監督は「現実をしっかり受け止めるしかない。もう1試合あるので、しっかり頑張りたい」と最終戦での勝利を目指したが、10月3日の巨人戦(神宮)も、6対10で敗れ、無念の96敗目……。試合後、涙ながらに「この悔しさをバネに、選手には頑張ってほしい」の言葉を贈り、チームを去った。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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