広島・石原慶幸 (c)朝日新聞社
広島・石原慶幸 (c)朝日新聞社

 2017年もさまざまな出来事があったプロ野球。華々しいニュースの陰でクスッと笑えるニュースもたくさんあった。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「アラフォー世代編」である。

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 アラフォー世代といえば、2017年シーズンで38歳になった広島の捕手・石原慶幸もその一人。

 攻守にわたってベテランの味を発揮する一方、ボールを見失いながらも、砂を投げて一塁走者の二進を阻止したり、アウトになったフリをして、二塁からゆっくり歩いて三進に成功したりと、珍プレーの数々で、ファンを楽しませてくれる“ミスターB級ニュース”でもある。

 そして、5月14日の巨人戦(マツダスタジアム)で、新たな“石原伝説”が誕生する。5対1とリードした8回1死二、三塁、石原はカウント2-1からスクイズを試みたが、乾真大の4球目は外角低めへのワンバウンド。これではバットに当てろというほうが無理だ。それでも石原は、ボールに覆いかぶさるようにして必死にバットを伸ばしたが、あと数センチ届かず、空振りしてしまった。

 通常なら、スクイズ失敗で三塁走者が挟殺されてもおかしくない場面である。

 ところが、ボールは捕手・小林誠司の目の前で大きく跳ね上がると、バックネット方面に転々。この間に三塁走者・西川龍馬に続いて、二塁走者・野間峻祥もホームイン。なんと、“空振り2ランスクイズ”という珍プレーになった(記録は西川、野間の重盗と乾の暴投)。

 8対1と大勝した広島は、6回に決勝2ランを放った鈴木誠也が母の日にちなんで「東京のお母さん、今日オレやったよ!」と松山竜平のパフォーマンスをパクるひと幕も笑いを呼んだが、B級ニュースファンにとっては、当然「この日のヒーローは、石原で決まり!」だろう。

 巨人の現役23年目のベテラン捕手・相川亮二は、高橋由伸監督より1歳年下の41歳。もちろんチーム最年長だ。7月30日のDeNA戦(東京ドーム)、8回に代打で出場し、そのままマスクをかぶった相川は、1点を追う9回2死一、三塁の場面で打席に入った。

「(前の打席で)打ってないのに、監督が使ってくれた。期待に応えたかった」と気力を奮い立たせ、DeNAの守護神・山崎康晃の初球を振り抜くと、打球は左中間真っ二つの2点タイムリー二塁打。見事、逆転サヨナラ勝ちの立役者となった。

「1本出れば同点になるということしか頭になかった。オヤジでもまだまだできるんだぞ、というところを見せたかったので、うれしいです」(相川)

 そして、41歳0カ月のサヨナラ打は、巨人では、57年の南村侑広の40歳6カ月を60年ぶりに更新する球団史上最年長記録(プロ野球記録は56年の東映・岩本義行、13年の楽天・山崎武司の44歳6カ月)でもあった。

 しかし、球団側から「もう1年現役を続けてほしい」と打診されたにもかかわらず、「自分が仕事をする場所がなくなった。気持ちも体も目一杯で、追いつかなくなってきた」という理由で現役引退を決意。10月3日、古巣でもあるヤクルト戦(神宮)の9回に代打で登場。ショート内野安打を記録して、現役最後の打席を通算1150本目の安打で飾った。

 全国のオヤジに勇気を与えてくれた“いぶし銀プレーヤー”の第二の人生に幸あれ!

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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